ドロンズ石本【新型コロナ 営業サバイバル実況中】#1

「行けるわけないでしょうが! 自粛でしょ、やってんの、お店?」

 受話器越しに、お客さまの怒声が鼓膜に突き刺さりました。都の営業自粛要請でキャンセルが殺到し、休業も考える中、残る1組、4人でのご予約を入れていただいていたお客さまをお迎えしようと、準備を整えてお待ちして約1時間が経った頃、再確認のお電話をしたときのことです。キャンセルのご連絡もない上、仕事してるそちらが悪いという言われ方をされてしまい、手が震えました。

 東京は恵比寿で「馬肉屋たけし」という、小さな飲食店をはじめて12年。日夜、不安で仕方ありません。悪いのは未知の殺人ウイルスで、お客さまも大変な思いをされている。

 ただ、こんな時であっても、店を開けなければならないお店は少なくありません。家族やスタッフの生活が立ち行かなくなるからです。外で働いている会社員、現場関係の皆さんとか、きっとボクらと同じような思いをされていると想像し、恐れながら、まずそのことから、実情をお伝えすることにしました。

 ボクがお店の経営にこだわる理由は、売れない時代にさかのぼります。努力しなければ明日はありませんから、オーディションを受け、ライブに呼んでもらえたら飛んでいく。少ないチャンスを掴もうと必死でした。でも困ったことに、それらは突然決まることが多く、すぐにアルバイトをクビになってしまう。それでまた駄目かと怯えていると、居酒屋の店長さんはこう言ってくれたんです。

「イシモッチャンが頑張っているのを、何で俺らがつぶさなきゃいけないの。バイトは来たいときに来ればいいよ」

 大げさじゃなく、このサポートがあったから、いまのボクがいます。その恩返しとまではいかないまでも、同じいばらの道を進む後輩たち、下積みの芸人や舞台女優、ダンサー、歌手のタマゴたちにバイトしてもらっています。

 名札に芸人志望は「芸人」、俳優志望は「俳優」とつけ、常連さんに覚えてもらったりして。今回は、いま働いてもらっている5人に「暇」を言い渡してしまいました。本当に合わす顔がないのに「頑張ってください」と言ってくれた彼らのためにも、闘うだけ闘いたい。

「努力して叶わないことはない。苦労に直面したときに、その苦労にどう向き合ったかによって、その人自身の生き方、考え方が定まっていく」

 故・野村克也さんの言葉です(笑い)。こんな時だから、皆さんと一緒に苦労に向き合ってみたい。このままではあと2カ月、持つか持たないか。ギリギリの実情をご報告させていただきます!  =つづく

(ドロンズ石本/タレント 構成=長昭彦/日刊ゲンダイ)