宝塚退団後は過食症に 真織由季さんとストレスケアの出会い

宝塚退団後は過食症に 真織由季さんとストレスケアの出会い

「精神安定剤を出してあげるから、すぐ舞台に出なさい」

 今から24年ほど前のことです。担ぎ込まれた奈落(舞台下)の診療室(現在は地上階にある)でそう言われました。宝塚劇場で主役を務める舞台の真っ最中、お芝居と歌謡ショーの間の30分休憩中に、全身の硬直と過呼吸で倒れてしまったのです。

 当時、私は27歳でした。診療室にいた市民病院の内科医から「パニック障害による過呼吸」と診断され、紙袋を使って自分の吐いた息を吸う応急処置を受けました。ただ、「舞台に出なさい」と言われても、とても出ていける精神状態ではありません。ショーでは私が歌うはずだった曲が、まさかの歌ナシで流れるという宝塚史上あり得ない事態となりました。もちろん、上級生からは総スカンでした(笑い)。

 当時はただの「イヤイヤ病」としか思われなかったんですよね。自分でも「心が弱いんだ」と思っていたので、気合で治そうとしていました。

 前兆はその1年前からあって、ひどい吐き気が突然、込み上げてくることが増えていました。それでもトップスターを目指して必死な時だったので、休めなかったのです。発作で倒れた後、定例の組替えがあって、いったんポジションが下がると症状も落ち着いたのですが、再びポジションが上がると、また倒れる事態に見舞われました。

■29歳で退団、今度は「過食症」に

 徳島にいる知り合いの精神科医に事情を話すと「症状が出たら飲んで」と言われ、2種類の精神安定剤を処方されました。一方は軽めで、もう一方は重めの眠たくなる薬。後者はほとんど飲みませんでしたが、前者は時々飲んでいました。 

 その頃にはもう「拒食」の症状が出ていて体重が激減。「食べると吐き気がくる→吐き気の恐怖で過呼吸になる→また倒れる」と考えてしまい、とにかく食べるのが嫌だった。そうやって、肉体的にも精神的にも追い詰められました。

 トップスターになりたい。でもこれ以上、迷惑はかけられない……。2度目の発作が出た時にそう思い、29歳で退団しました。でも、それですべてが解決したわけではありません。退団後3〜4年経ったある日、今度は「過食症」になったんです。

 ありがたいことに女優としてお仕事はたくさんいただくのですが、いかんせんどんどん太ってしまい、事務所にも家族にも「痩せろ」と言われる始末。でも、いくらダイエットしてもすぐリバウンドしてしまうのです。後々、友人から「あの頃は食べるスピードが尋常じゃなかった」と指摘されました。

 ただ、念願だった犬を飼い始めたら、その日から過食がピタッと止まったのです。本当ですよ(笑い)。自分でもびっくりしました。過食で12キロ太り、まったく痩せられなかった体が半年余りで元の体重に戻りました。

「なぜこんなに簡単に痩せられるんだ?」と喜んでいたのもつかの間、40代に入ったら今度はホルモンバランスが乱れて、生理が3週間も続くようになりました。胃腸も悪くなって体重が減り、比例するように仕事も減っていきました。

■バランスセラピーとの出会い

 そんな時、舞台の稽古中にギックリ腰になったんです。名医といわれる医師を訪ねてこれまでの経緯を話すと、「君の場合、原因はストレスだよ。それを何とかしないと、腰に限らずすべての体調不良は治らない」と言われました。

 その言葉で勉強し始めたのが「バランスセラピー」です。実はギックリ腰になる前に、偶然ストレスケアのためのバランスセラピー学校の人との出会いがありました。出会った時はまったく興味がなかったのですが、名医の言葉でバランスセラピーの勉強を始めて驚きました。これまで「何でこうなるんだろう?」と思っていたことの答えが、すべてそこにあったからです。

 勉強を始めて1カ月ほどで、苦しんできた不定愁訴がどんどんなくなっていきました。過呼吸は最後まで残りましたが、それも5年ほど前には消え、今は何の症状もありません。

 現在は「ホメオストレッチ」という筋肉から脳へアプローチするトレーニングを実践しています。簡単に言えば、脳の疲れを取る運動です。抗重力筋という重力にあらがう筋肉が脳のストレスと関連しているんです。

 こんなふうにいろいろなことを学ぶきっかけになったのは病気のおかげです。「すべての体験に意味がある」と思えるようになり、いいことも悪いこともすべてありがたく感じます。宝塚で倒れたこともよかったと思っています。あのままトップスターになれていたとしても、傲慢な人間になっていたかもしれませんから(笑い)。

▽まおり・ゆき 1967年、神奈川県生まれ。86年に宝塚歌劇団に入団し男役スターとして脚光を浴びるも96年に退団。その後はミュージカルを中心に舞台で活躍している。一方で自身の経験からストレスケアを学び、カウンセラーとしても活動。日本アンチエイジング歯科学会常任理事、JenneVBM宝塚受験クラス講師なども務める。

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