【トランプに握られた日本人の胃袋】#13

 米国から輸入される不気味な食品は、なにもホルモン漬けの牛肉だけではない。肯定論、反対論いろいろある遺伝子組み換え(GM)作物もけっこう怖い。

 そもそも作物の遺伝子を換える必要性はどこにあったのだろうか。

 本来、私たちが食べている作物は何千年もかかって品種改良をしてきた。たとえば、イネの野生種は小さな種をつけた雑草のような植物だったのを、人間が1万年以上かけて改良したのだ。ところが、1970年代になって遺伝子を組み換える技術が実用化されたことからこの流れが変わった。植物も動物と同じで、細胞の中にある遺伝子がその生物の形や性質を決める。つまり、遺伝子を換えれば植物を思い通りに変えられるというわけだ。

 96年、この技術を使って、あらゆる雑草を枯らしてしまうラウンドアップという除草剤に耐性のある大豆とトウモロコシが作られた。

 ラウンドアップは、雑草だけでなく穀物も枯らしてしまう強力な除草剤だ。まるでベトナム戦争で使われた枯れ葉剤のようなものだが、製造したのが枯れ葉剤を作っていた企業である。だが、穀物までが枯れてしまったら元も子もない。そこで、遺伝子を組み換えることでラウンドアップに耐性のある穀物を作った。そしてこの穀物のタネと劇薬の農薬をセットで売ったのである。

 同時期に、害虫が作物をかじると死んでしまうように遺伝子を組み換えたタネも販売された。害虫が感染して死んでしまう細菌の遺伝子をトウモロコシに組み込み、穀物が自ら殺虫成分を作るようにしたのだ。

 現在この2種類が遺伝子組み換え作物の主流になっている。

 農作物を育てた経験のある方なら分かるだろうが、一番厄介で手間がかかるのが害虫や雑草の駆除だ。放っておくと作物が育たなくなる。それが米国のように広大な農地となると、生半可ではない。その点、飛行機から劇薬をまいて雑草だけを全部枯らし、害虫が農作物をかじったらコロッと死んでくれたら、こんな楽なことはない。というわけで、またたく間に拡大していった。

 しかし、猛毒の除草剤を大量にまいたら、それに耐えたトウモロコシや大豆に残留する。当然これを食べれば人間の体に入る。念のためにいうが、この残留農薬は洗っても落ちない。また、昆虫が食べたら死ぬような穀物を、人間が食べて大丈夫だろうかという素朴な疑問も湧く。そんなGM作物が日本に大量に入っていて、さらに拡大しようとしている。「不気味」だけでは済まない問題になっている。

(奥野修司/ノンフィクション作家)