池田保行【ON&OFF 成否を分ける身だしなみ】

 街中にはポケットに手を突っ込み、背中を丸めて歩くサラリーマンが少なくない。なぜ手袋をしないのだろうか。手袋をするだけで背筋がスーッと伸び、冬のコートやジャケット姿もシャキッとキマるというのに。

 手袋は「寒さ対策」として有効なのはもちろんだが、ポケットを使わなくなればジャケットやコートの形崩れ防止にもなる。それに中高年ともなると、転んだときにとっさに手が出ないのは危険だ。安全性のため、つねに両手を空けておくのにも、手袋はこの季節にマストなアイテムと考えたい。

 手袋の選び方はこうだ。ニットや化繊のものはカジュアル用で、スーツやジャケットにネクタイをして出勤するなら革製に限る。その際、羊革の手袋を選ぶと、軟らかくてフィットしやすく、手元も上品に見える。牛革は少々武骨な場合が多いものの、カジュアルにも合わせられる。手袋の素材として最高級は「ペッカリー」と呼ばれる野豚の革だ。

 つくりのうえで、縫い糸が表に出ている「アウトシーム」と、出ていない「インシーム」とがある。当然ながらスーツに合わせるなら縫い糸が出ていない「インシーム」を選ぶのがベター。「アウトシーム」はカジュアル用だ。

 色は革靴に合わせてコーディネートする。黒靴のときは黒革手袋、茶靴のときは茶革手袋といった具合だ。「靴とベルトは同色で合わせる」というコーディネートの鉄則に合わせて、靴とベルトと革手袋を同色で合わせるのが正解だ。ベージュやバーガンディーなど差し色としてシャレる場合は、ネクタイやポケットチーフなどで色を拾うといい。

 ライニング(裏地)の「ある」「なし」は好みでいい。カシミヤライニングは確かに温かいが、手汗をかいて仕方ないという人もいるだろう。サイズは少しタイトフィットぐらいでいい。革手袋は必ず伸びる。指の股に届かないものはNGだが、指が多少、曲げにくいぐらいでも、使い込むほどに手に馴染んでくる。手袋を外したら、チーフのようにコートの胸ポケットに上向きに差す。完璧な「紳士の冬の装い」である。

(池田保行/ファッションエディター&ライター)