【トランプに握られた日本人の胃袋】#14

 前回は、危ない遺伝子組み換え(GM)作物がなぜ生まれたのか、その経緯を書いた。別に遺伝子なんて組み換えなくても、従来の大豆やトウモロコシで十分なのに、なぜみんなが不安になるようなGM作物なんて作ったのかと思うかもしれない。

 それには米国の企業風土が大きく影響している。企業利益至上主義の米国では、作物以外の雑草をぜんぶ枯らし、害虫を寄せ付けないGM作物は、生産量も上がって効率的だし、大規模栽培に便利だからである。だから反対意見があっても、大規模農家はそれに目もくれずに普及させた。いまや米国は、GM大豆の作付面積が94%、GMトウモロコシは92%と、勝利を目前にしている。

 日本は、穀物としてのトウモロコシはほぼ全量輸入だ。年間1600万トン。このうち9割をアメリカに依存し、ほとんどが遺伝子組み換えだ。65%が家畜の飼料で、残りはコーンスターチのほか、コーンフレークや甘味料となって日本人の胃袋に収まる。

 また、日本の大豆の自給率もたった6%で、ほとんどが輸入。輸入大豆の7割、230万トンが米国からだ。もちろんほぼGM大豆。7割弱から油を搾り、搾りカスは牛などの飼料になる。残りの大半は食用だが、このうち米国産GM大豆は約52万トン。ぞっとする数字だ。私たちは知らないうちに、GM大豆を味噌、醤油、豆腐、納豆などで食べている。

 国民が不安に感じているGM作物について、日本の厚労省は、食べても胃と腸で全て消化されるから問題はないとしている。その後、イギリスの研究グループが、人工肛門の患者で人体実験をしたところ、便の中にGM大豆のDNAが分解されないまま残り、除草剤に耐性となった腸内細菌も検出された。

 人間の腸には100兆個といわれる細菌がすんでいる。この細菌は人類が誕生したときから人間と共生してきた。今ではこの細菌は腸に入ってくる化学物質を無毒化したり、胃や腸で消化できなかった繊維やでんぷんを消化したり、ホルモンを作ったりしている。もっとも重要なのは免疫に関わっていることだ。

 しかし、除草剤耐性菌などが増えて腸内のバランスが崩れると薬物アレルギーや食物アレルギーなどを引き起こし、免疫疾患やぜんそく、肥満、自閉症といった現代病の発症につながるといわれている。

 遺伝子組み換え作物と人体の健康のことをさらに掘り下げていきたい。=つづく

(奥野修司/ノンフィクション作家)