【ドクター牧田 最強の食事術】#10

 皆さんは「ファクトフルネス」という言葉をご存じでしょうか? スウェーデンの医師で公衆衛生の研究者が作り出した造語です。データや事実に基づき、世界を読み解く習慣のことです。

 この研究者が書いた同名の本はビル・ゲイツやオバマ元大統領が激賞し、世界中で大ヒットしました。耳にしたことがある、という人も多いと思います。

 人は思い込みから行動したり、主張したりすることが多く、勉強ができる人ほどその傾向が強い。だから、データや事実と向き合うことが大切で、思い込みから解放されれば世界を正しく見ることができるというのです。

 私もまったく同感で、患者さんに限らず医療関係者や学者のなかにも、過去のデータや記憶、思い込みにとらわれて、真実を見誤っている人は少なくありません。

 そのひとつの例が、「肉をたくさん食べると脳卒中になりやすい」という“常識”です。この常識は新たなデータにより否定されています。

 2013年に「ヨーロピアンハートジャーナル誌」に掲載された、筑波大学などが行った研究論文によると、肉をたくさん食べ、飽和脂肪酸の摂取量が増えるほど血圧が下がり、脳卒中と心筋梗塞の発症率は飽和脂肪酸の摂取量が一番少なく、炭水化物をたくさん食べている人たちに圧倒的に多く発症したのです。

 脂肪の摂取量が少ないと、肺や心臓の動脈の梗塞が進んで脳出血、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなるというわけです。

 研究は男女合わせて約8万2000人を対象にして、その食事の傾向と循環器疾患の発生率の関係を約11年にわたって追跡調査したものです。それぞれ事前の5年間における調査で脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患やがんになった人がいないことを確認したうえで追跡調査が行われています。信頼性の高い調査だと言えるでしょう。

 むろん、この論文も将来、新たな研究で否定される可能性はあります。しかし、それまでは、「肉などから得られる飽和脂肪酸の摂取量が少なく、炭水化物をたくさん食べた方が脳卒中や心筋梗塞の発症率が高い」というデータから考えて行動すべきだと思います。

 いまは2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる、という事実から、がんによる死を免れることに重きが置かれていますが、依然として脳卒中は死に至る病気の上位にあります。しかも、死に至らずとも残った障害に苦しむことが多い。

 私は、日本人はしっかり肉を食べるべきだと思います。

(牧田善二/糖尿病専門医・AGE牧田クリニック院長)