【進化する糖尿病治療法】

 新型コロナウイルスに対して糖尿病患者が気を付けることについて、日本糖尿病学会では「一般的な衛生対策に加えて、不要不急の外出を避けることや人混みを避けること」とホームページで紹介しています。

 新型コロナウイルスにかかった時、心疾患や呼吸器疾患と並び、糖尿病も重症化する可能性がありますが、新しい情報が次々に出てくることを見ると、断定はできません。ただ、糖尿病の患者さんは、そうでない方と比べて免疫力が低いということは言えます。それは、糖尿病になると細菌を殺す白血球の働きが悪くなり、抗体をつくるリンパ球の働きも悪くなるので、免疫システムが低下するからです。

 また、毛細血管での血液の流れが悪くなって酸素や栄養が十分に行き渡らず、細胞の働きが低下。免疫に関係する白血球も感染部位に到達しづらくなり、抵抗力が低下します。結果、感染症の発症や悪化が見られやすくなるのです。

 今回の新型コロナウイルスは、たとえ感染しても約8割の方は自然に軽快して治癒し、約2割の方は肺炎を合併し、時に高齢者や循環器系の基礎疾患がある方が肺炎を起こしやすいといわれています。糖尿病の方は、その2割に入ってしまうリスクも考えて、従来言われている対策に加え、次のことに気を付けてほしいと思います。

 まずは、1〜2カ月の血糖コントロールを示すHbA1c(ヘモグロビンA1c)を低下させる生活習慣を心掛けることです。HbA1cが高い場合、脱水傾向にあることが多いので、水分をこまめに取りましょう。この時、コーヒーや紅茶、お茶ではなく、水の方がいいです。もし、お茶を飲むなら、可能であれば利尿作用がないカフェインフリーのものを選んでください。

 急激な血糖低下は低血糖を起こすことがあるので、食事を取るタイミングにも注意が必要です。糖質は完全に食べないようにするのもダメですが、一度にたくさん取るのも血糖値の急上昇・急低下を招きやすくするので避けてください。

■深呼吸しながら運動すると免疫力が高まる

 次に、免疫力をベターな状態で維持すること。十分な睡眠、適度な休憩、偏らない食生活、気分転換が役立ちます。免疫力は「○○○をしたからすぐ上がる」というものではありません。日頃から意識することで、その人にとってベターな状態を保てるのです。

 ビジネスパーソンにとって、常に十分な睡眠、適度な休憩を取るのは困難なことでしょう。どれかひとつできないことがあっても、免疫力を下げることがいくつも重ならないようにしてください。夜、ベッドに横になって眠る時間がどうしても短くなってしまうなら、電車の移動時間、昼食時間など細切れな時間を利用して、仮眠を取ったり、目を閉じて脳や体を休めるという手もあります。

 適度な運動も、免疫力を上げることにつながります。気温が上がり、桜が咲き、これから外で過ごすのにいい季節です。散歩をしたり、ラジオ体操などをするのもいいですね。しっかり深呼吸しながら体を動かすと、呼吸筋が鍛えられます。呼吸筋の強化で免疫力を上げ、心肺機能の維持を図りましょう。

 そして、最も大事なのは、感染源との接触を避けること。現状難しくもありますが、人混みではマスクをつけましょう。100円均一などで売られているハンカチを使ってマスクを手作りする人もいます。ドアノブや電車の吊り革などは極力素手で触らず、手洗い、アルコール消毒を徹底しましょう。家族間であっても、タオルの共有などはやめた方がいいです。

 感染した人の8割が自然に軽快し治癒するということは、発症に気付いていない人も大勢いるでしょう。症状があっても、風邪なのかインフルエンザなのか新型コロナなのか分からない。誰でも感染源になり得ます。糖尿病の方は感染して重症化させないように気を付けるとともに、感染源にならないようにすること。そして糖尿病でない読者の方も、「どうせかかっても大したことないでしょ」などと思わずに、あなたが感染源にならないための十分な対策を講じてください。

(坂本昌也/東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授)