コロナウイルス禍で家計が切迫している。サラリーマンのAさん(54)は在宅勤務が続き、鍼灸師(個人事業主)の奥さん(53)は仕事がほぼゼロになり、月収15万円が消えた。今春から大学に通う長男(18)は入学式が中止となり、その後はずっと自宅待機で、テレビを見たりゲームに興じたり……。朝、昼、夜の食費は3人分。水道代などの光熱費もかさむばかりだ。トイレットペーパーもあっという間になくなる。「今の収入ではやっていけない」とAさんは嘆く。生活防衛の知恵とは――。

 東京都の休止要請「施設リスト」に、「鍼灸・マッサージ」は入っていない。3密を避けるため営業を自粛しても、都から協力金はもらえないのだ。

「国民全員に一律10万円が支給されても、カミさんの数カ月分の減収は埋まりません。この先、どうやって生活していけばいいのか。悩みは尽きません」(Aさん)

 コロナ禍で、こんな家庭は激増している。どんな防衛策を取ればいいのか。家計再生コンサルタントでマイエフピー代表の横山光昭氏はこう言う。

「生活防衛策はいくつかあります。新型コロナの感染拡大で家計の状況は以前とはかなり変化してきました。まずは現状を認識することが大切です」

①現在の家計状態をしっかり把握

 昼食代は夫や子供が家にいる分、間違いなく上昇だ。テレワークで電気代もかさむ。トイレの利用頻度も増えるから水道代もアップ。夫は仕事帰りのちょっと一杯がなくなり、自宅で夕食。ビールや缶チューハイなど酒代も安くない。

「お米やパスタなど買い置き分も含め、食費はおそらく月2万〜3万円は増えました」(Aさん) 3月の消費者物価指数(総務省)は前年同月比で0・4%上昇だった。プラスは3年3カ月連続。食料だけを見ると同1・4%アップだ。物価上昇で生活は間違いなく苦しくなっている。巣ごもり消費の必需品、カップ麺は5・5%アップ、ビールのつまみにピッタリのポテトチップは6・4%上昇していた。そのほかブロッコリー7・4%、トマト7・7%、アイスクリーム7・8%、ミネラルウオーター7・8%の上昇率となっている。上下水道代(2・3%増)、ティッシュペーパー(11・9%増)、トイレットペーパー(7・7%増)、マスク(4・1%増)も値上がりだ。

 わが家の生活費はどのぐらい増えているのか。きっちり把握すれば対策が取りやすい。

②現金(貯蓄)を増やす

 鍼灸師のように突然、現金が入ってこなくなったら生活は困窮する。蓄えを取り崩して急場をしのぐしかない。

「これまでは、最低7・5カ月分の生活費を確保しておくというスタンスで十分だったと思いますが、今後は少なくとも1年分のキャッシュは必要でしょう。そのためには残せる範囲で構わないので、貯蓄を心がけるべきです」(横山光昭氏)

 仕事を失ったら、一時的でもいいので働いて収入を得たい。巣ごもり消費で需要の増えているネット通販のドライバーや、外食のデリバリーなどはオススメだ。

③キャッシュレスをやめる

 クレジットカードでの買い物は、どうしてもトータルの使用金額をつかみにくい。スマホ決済も、〇〇ペイの乱立で浸透してきたが、コロナ不況下では使い過ぎに注意だ。

「キャッシュレスはお金の管理がしにくいといえます。特にクレジットカードは使い過ぎてしまう傾向にあります。上手に管理するには、キャッシュレスで使う金額をあらかじめ決めておくことです。たとえば、今週の食費はキャッシュレス1万5000円、現金5000円と設定し、その範囲内で買い物をします。月単位ではなく、週単位で決めたほうがお金の動きはつかみやすい」(横山光昭氏)

 毎月の支払金額を一定額にするリボルビング払い(リボ払い)は、金利が高めなので不況時には向いていない。可能な限り「1回払い」を選択すべきだ。

④無理に支払わない

 収入が減ったからといって、家賃や光熱費、生命保険などの支払いは、まず減額されない。場合によっては借金をしないと払えないケースも出てくる。

「役所や電力会社などに相談することが大事です。さまざまな支援策が始まっています。電気・ガス・水道は支払いが困難な人に対し、1カ月以上の支払期限延長を実施しています。それ以外にも救済措置はたくさんあります。何も手を打たないで、ただ支払いをストップさせるのは最もダメです。とにかく相談すること。そうすれば危機を脱出できる道筋も見えてきます」(横山光昭氏)

 住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」は返済期間の延長が可能となった。NTTドコモやKDDI(au)なども携帯電話料金の支払期限が延長できる。国民健康保険や生命保険、固定資産税、大学の授業料……。「払えない」と悩んでいないで相談したい。

⑤情報を集める

 コロナ倒産やコロナ休業、コロナ失業で生活が困難というケースもある。各自治体が取り扱う「緊急小口資金」は生活維持のために必要な人を対象とした制度。上限10万〜20万円など借り入れ条件はあるものの、無利子だ。

「自分から動いて、さまざまな制度を調べることが重要です。国から無利子で借りられる支援策もあります。アチコチにアンテナを張り、情報を集める。そして自分は対象かどうかを知ることは有効な防衛策です」(横山光昭氏)

 政府の緊急事態宣言が解除されてもコロナ不況は終わらない。賢い生活防衛術で乗り切りたい。