(NY在住ジャーナリスト・シェリーめぐみ)

 ニューヨークのロックダウンと自宅待機が始まった3月22日以降、多くの人はこれまでと全く違う生活を余儀なくされている。筆者も1週間に1度の買い物以外は家にこもる生活。友人には全てをデリバリーで済ませ、全く外に出ない人も少なくない。

 子供がオンライン授業を受ける隣で親はテレワークしている。その合間にZoomのヨガやダンスのクラスを受け運動不足を解消する。ロックダウン直後にはエクササイズマシンがよく売れ、使わなくなったマシンをレンタルするジムも出た。

 一方、これまでできなかったことをしようと、楽器の練習を始める人、映画を見まくる人。暇な時間を生かしてプランターでガーデニングしようという人も増え、パニック・プランティングと呼ばれたりしている。学生の中には、Housepartyなどのアプリを使ってバーチャルパーティーを楽しんでいる者もいる。

 また家族がこれほどの長い時間一緒にいることは初めてで、親子や夫婦の絆が深まったという人もいれば、逆に夫婦仲が決定的にダメになりコロナ離婚という言葉も生まれている。

 NYではZoomで婚姻届を出せるシステムも始まった。

 そんな中で、ある事実に気づく人も増えている。自宅待機は特権だ――と。

 日本も同じかもしれないが、この国で自宅待機しているのは基本ホワイトカラーだ。「ホワイトカラー自主隔離」という言葉もある。この状況でも外に出て働いているのは、医療関係者、養護施設の職員、警察官、公共交通機関の職員、ウーバー・ドライバー、スーパーマーケットの店員、食品や日用雑貨を運ぶトラックドライバー、配達員、清掃員などである。

 最前線ワーカーと呼ばれる彼らは、それだけ外に出て人と接しているから感染する可能性も高い。中でもニューヨークでは、地下鉄など鉄道職員80人以上が犠牲になっている(4月24日時点)。

 そして最前線ワーカーの4割は白人以外の人種で、3分の2は女性、3分の1が低所得者。別のデータでは、ニューヨークを含めアメリカ各都市ではコロナの犠牲になっているのも有色人種、特にヒスパニック、アフリカン・アメリカンの死者が人口比率に比べて高い。感染リスクを冒して働いていれば当然だろう。

 一方、多くの富裕層が、ウイルスのない遠隔地のリゾートなどで何不自由ない生活を送っている。ニューヨークの大病院のCEOが、医療崩壊の最中にフロリダの豪邸にいるとは何事かと怒る人、自宅からテレビ出演するセレブの家が豪邸ばかりでうんざりしたという人も少なくない。

 アメリカではコロナによってこうした格差がますます明白になっている。同じ自宅待機でも、ネット環境や家の広さなどが大きな差を生む。「パンデミック・カースト」という言葉も生まれている。

 日本に関してはここに数字がなくて恐縮だが、自宅待機されている人は時々、家にいたくても働かなければならない人のことを考えてみてはどうだろうか。最前線で働いていらっしゃるみなさんがいるからこそ家にこもれるのである。しっかりこもればこもるほど感染者は減るわけだから、自分だけでなく彼らの命や健康を守ることにもつながる。

 そして何より日本の最前線ワーカーの皆さんには感謝と拍手喝采を送りたいのはもちろん、それなりの手当が支払われていて欲しいと心から願っている。