新型コロナウイルスが世界中に感染拡大し、各地でマスクの争奪戦が繰り広げられている。医療用マスクだけでなく、一般用の不織布マスクも店頭から消え、日本でも相変わらず供給不足が続いている。マスクの効果については、WHO(世界保健機関)をはじめ各国の研究機関から報告が相次いでいるが、「予防目的でマスクを着用する必要はない」「感染拡大を防ぐために一般の人もマスクを着けるべきだ」などとかんかんがくがく。本当のところはどうなのか。

【1】新型コロナウイルスの感染を予防できるのか?

 一般的な不織布マスクの網目は5.0マイクロメートル程度なのに対し、新型コロナウイルスの大きさは0.1マイクロメートルだから、ウイルスそのものはマスクを余裕で通過してしまう。医療用のN95マスク(0.3マイクロメートル以上の微粒子を95%以上捕集できるマスク)でもブロックできない。

 ただし、マスクにまったく意味がないというわけではない。

「健康な人がマスクを着用することで自身のウイルス感染を防げるという科学的根拠はありません。しかし、症状のある人が周囲への感染を防ぐ効果は期待できます。新型コロナの主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。咳、くしゃみ、会話などで飛び散る飛沫の大きさはおよそ5.0マイクロメートルなので、完全ではないにせよ、ある程度はマスクに引っ掛かります。つまり、症状が出ている人や無症状感染者がマスクを着用すれば、ウイルスを含んだ飛沫をまき散らすことを防ぎ、第三者に感染させてしまうリスクを減らすのです」(岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏)

 米マサチューセッツ工科大の実験では、咳が6メートル、くしゃみは8メートル先まで飛沫を飛ばすことがわかり、マスクの着用で飛沫を正面から受け止めずに済み、感染リスクを軽減できる可能性があるとしている。

 マスクは不要としていたWHOも、緊急事態対応部門の統括者が「社会的な距離を保つことができないなど、状況によってはマスクを使うことで感染率を下げることができる」と変わってきた。欧米でも、日本が比較的感染を抑え込めているのはマスク着用が浸透していることが一因との見方があるという。

 多くの人が「症状は出ていなくても自分は感染しているかもしれない」と考えてマスクを着用すれば、感染拡大を防ぐ効果は期待できる。

【2】逆効果になるケースがあるのは本当?

 マスクには、ウイルスを含んだ飛沫を直接浴びることを防ぐ。ただし、飛沫とともにマスクの表面に引っ掛かったウイルスはしばらく生き続ける。それだけマスクは汚染されやすいといえる。

 汚染されたマスクを手で触り、そのまま目をこすったり、食事をしたりすれば接触感染のリスクが高くなる。また、ドアノブなど他のものに触れば逆に感染リスクを拡大させてしまう可能性もあるのだ。東邦大学名誉教授の東丸貴信氏は言う。

「以前、米国で1437人を対象に行われた比較試験では、マスクを単独で使用しても、マスクを使用しない場合と比べてインフルエンザの感染率の低下は見られませんでした。ただ、『マスク着用と手洗い』を併用したグループは30〜50%ほど感染率が低下しています。感染リスクを下げるためにはマスクだけでは不十分で、ウイルスを物理的に洗い流す手洗いをセットで行う必要があるのです」

 マスクさえしていれば安心だと過信して、こまめな手洗いを怠ると逆効果になってしまう。

 もちろん、マスクは正しく着けて、表面には触らないようにしなければならない。鼻から口、顎までをマスクで覆い、顔とマスクの間の隙間が最小限になるように装着する。マスクの表面には触らず、掛け外しはひもの部分を持つ。必ず使い捨てにして、使用済みのマスクはすぐに廃棄する。

 マスクは中途半端に使ってはいけない。

【3】「布」でも予防できる?

 安倍政権が1世帯2枚ずつ配布するとして話題になった布マスク。不織布マスクよりもさらに網目が大きく、当然、ウイルスはあっさり通過する。WHOは「いかなる状況下においても勧めない」としていたが、いまは「予防の効果があるかは、まだ評価ができていない」と見解を修正。

 米疾病対策センター(CDC)は4月に入り、ウイルス拡散を防ぐ一環として「医療用ではない布マスク」の着用を市民に推奨する方針を打ち出した。

 効果は望めるのか。

「不織布マスクと同様にウイルスそのものをブロックすることは期待できませんが、布マスクでもウイルスを含んだ飛沫をまき散らさないようにする効果はあります。微細な飛沫は通過してしまうとはいえ、それでも何も着用しないよりは感染拡大の阻止にはプラスです」(東丸氏)

【4】洗って再利用しても問題ない?

 ウイルスに汚染されやすいマスクは使い捨てがベストだが、入手しにくいいまは、できるだけ消費を節約したい。ただ、同じマスクを何度も使い続けると、ウイルス汚染が進んで接触感染のリスクが高まる。ならば、使用した不織布マスクを洗って再利用したい。それでも性能は維持できるのだろうか。

「未使用時の機能は期待できませんが、メーカーによっては手洗いしても繰り返し使えるようになっています。洗うときは漂白剤は使わず中性洗剤だけにしてください」(日本衛生材料工業連合会専務理事の高橋紳哉氏)

 不織布マスクは細繊維のフィルターが帯電加工されていて静電気でウイルスを捕集する。洗うと帯電効果が落ちるが初期性能の7割程度は維持できるという報告もある。

 布マスクもしっかり洗えば何度も使える。ウイルスを除去するには以下のような洗い方がおすすめだ。

①衣料用洗剤に10分間つけおきしてから水道水ですすぐ。
②塩素系漂白剤15ミリリットルを水1リットルで薄めて10分ひたす。
③水道水でしっかりすすぐ。
④清潔なタオルで水分を吸い取り、乾燥機は使わずに陰干しで自然乾燥させる。

 形崩れを防ぐため、もみ洗いはNG。柔軟剤も使わない。

 不織布でも布でもマスクは何日も連続で着用してはいけない。1日使ったら、必ず洗ってから再利用することが重要だ。

【5】不織布製品をより有効活用するには

 池袋大谷クリニックの大谷義夫院長が知人との雑談の中で、「それは使える」と思ったのが、ガーゼでマスクをくるっと巻く方法だ。

「本来、マスクは外すごとに新しいものに取り換えてほしい。マスクの表面にウイルスが付着するため、使い回しにすると、マスク表面のウイルスを自分の指で触れて接触感染を生じるリスクが高くなるからです。しかし医療従事者ですらマスクが不足している現状では、代替案が必要。口を覆う部分だけでなくマスク表面をガーゼで巻き、そのガーゼを頻繁に取り換える方法は、理にかなっていると思います」

 マスクを外す時は、耳にかけるゴムの部分だけを持ち、ガーゼを取り外した後は手を入念に洗い、可能であればアルコール消毒をしてから、新しいガーゼに取り換える。ガーゼで巻いたところが外れて使いづらければ、ホチキスなどで留める。その場合、ホチキスで留めたところがマスクの内側にならないようにする。ガーゼも入手困難なら、キッチンペーパーでも代用可能だという。

 マスクが貴重な今だからこそ、正しく使いたい。