前立腺がんの治療法で新型コロナウイルスをシャットアウト――。こんな予防法がイタリア・パドバ大学などの研究チームによって発表された。

 前立腺がんの患者に使われる治療法に「アンドロゲン遮断療法(ADT)」がある。アンドロゲンとは男性ホルモンの総称で、この中にテストステロンなどが含まれる。このテストステロンに前立腺がん細胞を増殖させる能力があるため、テストステロンの分泌レベルを下げることで増殖を抑制するのが、ADTだ。

 研究チームはADTを受けた患者5273人と、受けない患者3万7161人を調査。その結果、治療を受けたグループで新型コロナに感染した患者は4人で、受けなかったグループは114人だった。このうち重症は前者が1人なのに対し、後者は31人、死者は前者はゼロで後者は18人だった。ADTを受けた人のほうが感染者と死者の比率が少ないことが分かる。

 要するに、男性ホルモン(テストステロン)を抑えると、新型コロナに感染しづらくなり、重症化を防ぐ確率も高くなったということだ。

 ADTには外科手術で睾丸を切除する方法やテストステロンの分泌を命じる下垂体の機能を下げる方法、睾丸や副腎からの分泌を下げる方法など4種の方法があり、外科手術以外は投薬で行っている。

 ハーバード大学院卒で医学博士・作家の左門新氏(元WHO専門委員)に解説してもらった。

「体内には『TMPRSS2』という酵素があり、テストステロンがこの酵素に働きかけることで、ウイルスが肺細胞の中に入りやすくなります。ADTは、テストステロンのレベルを下げることで、TMPRSS2の動きを抑制します。新型コロナの感染を予防する効果が期待できるかもしれません。ただ、投薬した場合、一時的に性欲が減退する可能性もあります。一方、すでに肺炎の症状が出た人の治療効果があるかは、これからの研究を見ないとわかりません」

 新型コロナについては男性の感染者のほうが多いことが分かっている。東京都の集計によると、6日までの感染者は男性が2748人、女性が1993人。男性が1.37倍だ。

 パドバ大の発表によって、男性ホルモンがウイルス感染を手助けしていたことがあらためて判明した。研究チームは男性のほうが新型コロナの感染者が多いのは、こうした原理のせいだと主張している。近々、これを証明するための臨床試験を予定している。

 左門氏によると、AGA(男性型脱毛症)の治療も、男性ホルモンのレベルを下げる薬によって脱毛を予防する原理だという。

「あくまでも理論上ですが、AGAの薬を飲んでいる人には新型コロナの予防効果があるかも知れません」(左門新氏)

 これが証明されれば、薄毛治療をしている人は新型コロナに強いということになる。ぜひ真相を知りたいものだ。