【新型コロナ 今さら聞けない重大知識】#6

 コロナウイルスに感染すると、宿主である人間がどうして死ぬのだろう。その前に、ウイルスはどうやって増殖するのだろうか。

 ウイルスを吸い込んだとする。最初に鼻か喉の粘膜に付着すると、免疫グロブリンが感染を防ごうと行動を起こす。その攻撃をかわして体内に侵入するのだが、肺に到達すると厄介だ。

 細菌は自分で増殖するが、ウイルスはできない。多くの生物は細胞中にDNAを持っているが、コロナウイルスはRNAが1本の鎖のようになっていて、それをタンパク質の殻で包んでいるだけだ。だから、コロナウイルスが肺の細胞膜から侵入すると、細胞が持つ増殖機能を使って自分の遺伝物質をどんどん増殖していく。

 やがて増殖が臨界点に達した時、細胞を自己破壊させて大量のウイルスが爆発的に飛び出す。

 放出されたコロナウイルスは次々と他の細胞を攻撃して、同じように増殖していく。指数関数的に増えるというのはこういうことである。

■救いは活性酸素を消去する酵素か

 数個のウイルスに感染すると、10日ほどで数十億個まで増えるといわれるほどだ。

 当然、体内でウイルスが増えれば、白血球、マクロファージ、リンパ球といった免疫細胞が総動員される。免疫細胞の武器は、ウイルスをのみ込む貪食作用もあるが、もっぱら活性酸素で攻撃する。活性酸素は、他の物質に触れると簡単に酸化してしまう。細胞膜も通過するので遺伝子を傷つけるし、ウイルスを殺すぐらい猛毒だ。免疫細胞はサイトカインという物質で情報を伝達しているが、ウイルスはこれを狂わせて混乱状態に陥れるらしい。すると免疫細胞は、活性酸素をまるで機関銃をやたらに撃ちまくるように攻撃するものだから、人間の体細胞もこれに当たって死んでしまう。

 それだけではない。パニック状態になったキラーT細胞などは、感染した細胞だけでなく、健康な細胞にも自殺命令を出すから、肺を保護する細胞が破壊されて、細菌が感染して肺炎を起こして死ぬというわけである。 免疫細胞が集まれば集まるほど、宿主である人間のダメージが大きくなる。

 これを発見したのは、熊本大学名誉教授の前田浩さんだ。インフルエンザウイルスに感染して死んだマウスを調べると、大量にいるはずのウイルスがいないのでおかしいと思って調べたら、体内のマクロファージや白血球などが出す大量の活性酸素で死んだとわかった。それを証明するため、SODという活性酸素を消去する酵素を高分子につないで注射すると、マウスは死ななくなったそうである。 (つづく)

(奥野修司/ノンフィクション作家)