親の介護のため、畳の部屋を洋室に模様替えしたいと考えた。そんな時、有力候補になりそうなのが街の小さな畳屋が考案した「リフォーム畳」だ。

 イ草でできた通常の畳表のかわりに、洋室や台所などで使われるクッションフロアシートを使用。合板をシートに裏打ちすることで強度を確保した。車いすを使っても沈み込んだりすり切れたりしないため、介護用リフォームで注目を集めている。

 考案したのは埼玉県八潮市の大山畳店。夫婦と息子で営む、小さな畳屋だ。開発から特許申請まで、リフォーム畳事業を担当してきた妻の大山惠美子さんは、「開発を始めたのは10年ほど前。どんどん畳が売れなくなっていて、なんとかしなくてはと思っていました」と、当時を振り返る。

 イ草の畳表のかわりに、塩化ビニール製のクッションフロアシートを畳床に縫い付けた畳を作る。それを畳替えの要領で入れ替えれば、簡単にリフォームできると考えたのだが、事はそう簡単に進まなかった。

 クッションフロアシートをただ縫い付けただけでは、波打ってしまう。またシート自体も、加工しやすさを考慮してか、素手でも破れるような強度しかなかった。

「もっと強い、破れないシートを作ってほしいとメーカーに頼んでも、まともに相手にしてもらえませんでした」(大山さん)

 畳表に使うのはそもそも想定外の使用法だし、どれだけニーズがあるかもわからない。メーカーが興味を示さないのも、無理もない話だった。

「強度が足りないなら、合板で裏打ちすればいいのではないか?」

寝床でウトウトしながらたどりついたアイデア

 大山さんは寝床でウトウトしながら、このアイデアにたどりついたという。クッションフロアシートはそもそも床材に接着して使うものだから、合板に接着すれば強度の心配はなくなる。シートを合板より少し大きくして縫いしろを作り、畳床に縫い付けると、うまくいった。

 こうして2015年、リフォーム畳は売り出されたのだが、当初は見向きもされなかった。

「店のホームページもこの畳発売を機に始めたくらいで、小さな畳屋がどうPRすればいいのか、見当もつきませんでした」

 潮目が変わったのは、八潮市が認定する18年度の「八潮ブランド」に、この畳が選ばれたことだった。メディアにも取り上げられ、徐々に注文が入るようになっていった。

 介護のためのニーズが大きいというリフォーム畳。まず、工事が簡単だという点がウケている。

「畳の採寸と入れ替え、2日で計6時間ほどあれば工事は終わります」(大山さん)

 通常のフローリング工事では、こう簡単にはいかないだろう。また畳床は通常の畳と同じなので、クッション性にも優れている。お年寄りの転倒事故を考えると、これも見逃せない長所だ。

 畳とフローリングの、いいとこ取りなこの畳、介護用リフォームの、切り札となるか。

 (取材・文=五嶋正風)