「空き家活用株式会社」 和田貴充社長(前編)

 年々、深刻になっている日本の「空き家」問題。総務省の統計によると、空き家率は過去最高の13.6%。それは地方だけの問題ではない。東京でも転売・賃貸情報に載っていない分譲マンションの“埋もれた”空き部屋は、分かっているだけで5000戸以上。その数は今後も増えていく。

 そんな空き家問題を解決すべく、2014年に設立されたのが、その名も「空き家活用株式会社」。代表取締役社長の和田貴充さんは、「空き家は社会問題であると同時に大きな市場でもあります。そこを掘り起こすことができれば、空き家という課題も解決するはず」と自信をのぞかせる。

 その手段のひとつとして18年に始めたのが「AKIDAS(アキダス)」というサービスだ。要は空き家のデータベース。不動産業者が、その情報を基に空き家所有者に連絡を取ることで、活用を促す仕組みだ。

「空き家活用のネックは、情報の少なさがあります。活用したい不動産会社があっても、現地を調査し、登記情報を調べるのは相当な負担です。それを私たちが独自調査し、登記情報の確認も肩代わり。現在、都市部を中心に3・7万戸の空き家情報を閲覧できます」

 空き家をモノとして捉えるビジネスは盛んになっているが、空き家の所有者(つまり、人)にアプローチするビジネスは珍しい。その独自性が評価され、「未来2019」など数多くのビジネスコンテストで入賞。空き家問題を抱える自治体からも注目を集める。

24歳で1500万円の借金

 創業者の和田さんは1976年、大阪・摂津市の生まれ。職人の多い町で、父親も建築美装の会社を営んでいた。

「とにかく明るい父親で、頼まれたら嫌と言えない性格だから人望もありました。小さい頃から現場に連れていかれて、自然と跡を継ぐものだと思っていましたね」

 だからか進学には一切興味がなく、中学の時は“やんちゃ”し放題。バイク絡みでトラブルを起こし、家庭裁判所に父親と丸刈りで出頭したことも。高校時代はラグビー部に所属しながら、遊びとバイトに明け暮れた。

 高校卒業後は大阪のビジネス系専門学校に入学するが、1週間で「おもろないから」と自主退学。東京に出てビルメンテナンスの仕事に就くも、20歳の時、父が肝臓がんで倒れる。余命3カ月。実際には告知後3週間で息を引き取った。

「とりあえず職人さんたちと現在進行中の現場はやり終えました。それがいつの間にか会社自体を引き継ぐことに。最初は景気もよくて、多い時は20人もバイトを使っていたのですが、しょせんは素人経営。安い仕事ばかり請け負っていたので利益が上がらず、むしろマイナスに。気づけば複数のマチ金から1500万円の金を借りていました」

妻に起業したいと打ち明けると…

 その時24歳。すでに結婚して2歳の子もいた。そこに救いの手を差し伸べたのが、父の時代から親しくしている元請けの不動産会社の社長。

「このままやり続けていたら大変なことになる。会社を整理してうちに来い。一から不動産を勉強しろと言ってくれたんです。給料はうちの嫁さんに必要な生活費を聞いて、毎月その額を払ってくれました。仕事の上でも、人生の上でも頭の上がらない恩人です」

 それから馬車馬のように働き、借金も少しずつ返済。不動産の仕事も面白くなってきた。しかし、28歳の時に会社が倒産。住宅メーカーに転職する。不動産部門を立ち上げるために請われて行ったのだが、結局実現せず1年後にハローワークで見つけた不動産会社に転職。新築分譲物件を売る営業マンとして働き、とんとん拍子で本社営業の管理職に昇格。借金も返済した。

 24歳で失敗して10年。「もう一度起業したい」という思いが、和田さんの胸にこみ上げていた。

「必要じゃない人にまで強引に新築住宅を売りつける当時の仕事にも嫌気がさしていました。オヤジのように人から喜ばれる仕事がしたい。だけどそんな会社はない。ならば自分でやるしかないと」

 妻に打ち明けると、こう言われた。

「毎月50万円家に入れてください。足りなければコンビニでバイトしてでも足すこと。だったら独立してもいい」

 1500万円の借金を背負った時も「これくらい返せんでどうする」とハッパをかけてくれた妻。踏ん切りがついた和田さんは会社を辞め、店舗を持たない“流しの不動産屋”を始めるが……。

 =後編につづく

(聞き手=いからしひろき)