新型コロナウイルス対策で長引く外出自粛やテレワークにより、メンタル不調を訴える人が続出している。「コロナ疲れ」や「コロナうつ」といった言葉が広く使われ、メンタルヘルスに関わる相談も急増している。そのまま放置していると心身ともに深刻な問題を起こしかねない。改善のために何より重要なのが「睡眠」だという。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に詳しく聞いた。

 自宅にこもる生活が続くことでメンタルに不調を来す原因はいくつもある。まずは、毎日の生活リズムがガラッと変わってしまうことだ。

「テレワークでは、通勤や身支度、化粧のための時間が必要なくなります。そのため、これまでと同じ時刻に仕事を始めるとしても、起床時間が遅くなりがちです。いつもより遅く起きても問題ないからと就寝時間も遅くなる。このように起床と就寝の時間が不規則になると、体内のリズムが乱れて睡眠の質が悪くなってしまうのです」

 疲労回復やストレスの改善には、自律神経をしっかり休ませることが重要だ。そのためには質の高い睡眠が欠かせない。睡眠の乱れが続くと、心身ともに不調を招くことになる。

 次に「自分の時間」がなくなってしまうのもメンタル不調の要因になる。専業主婦である妻の場合、夫はテレワーク、子供は休校となると、常に家族と一緒にいる時間ばかりになる。夫や子供にしても、自宅の外に出ることでリフレッシュできていた時間がなくなってしまう。

「たとえば都心のマンション住まいの場合、家族一人一人が個人の部屋を確保できているケースは少ないでしょう。リラックスできる“自分だけの空間”が持てないとストレスがかかる状態が続くうえ、解消もできないのでどんどん蓄積していくことになります」

 さらに、新型コロナの感染拡大がいつ終息するのか、いつ緊急事態宣言が解除されて外出自粛が終わるのかといった見通しが立たない不安がストレスを増幅させる。

「たとえつらい環境下でも、ゴールが見えていれば『そこを目標にがんばろう』という気持ちになって乗り越えることができます。しかし、今回は先がまったく見えず、いまの生活がいつまで続くのかがわからないため、ずっとストレスを抱えたまま日々を過ごす状況になっているのです」

 ストレスと睡眠は互いに大きな影響を与える。睡眠が不足すると、自律神経が休まらずに疲労がたまってストレスが解消されない。ストレスが蓄積すると自律神経にますます負担がかかり、睡眠が乱れてしまう。この「負のスパイラル」がいま起こっていて、メンタル不調を招いているのだ。

「しかも、睡眠不足は感染症にかかりやすくなります。十分な睡眠がとれていないと交感神経が優位になっている時間が長くなり、コルチゾールというホルモンが多く分泌されます。コルチゾールはストレスにより分泌が促進されるステロイドホルモンの一種で、免疫を抑制する作用があり感染リスクをアップさせるのです。また、睡眠不足で自律神経のバランスが崩れると、免疫をつかさどる白血球の働きも低下させてしまいます」

■「貧乏揺すり」で運動不足を改善

 さらに、睡眠不足はウイルスを無力化する抗体をできにくくする。ワクチンを接種した後の抗体産生量を調べた研究では、「接種した夜にしっかり睡眠をとった人は、徹夜して睡眠不足だった人に比べて4週間後の抗体が約2倍多かった」と報告されている。睡眠不足だと、作られる抗体が半分になってしまうのだ。

 睡眠を整えれば、メンタル不調が改善し、感染症リスクも抑えられる。対策の基本は、テレワークでも普段と同じ時間に起床して、仕事を始める時間も一定にする。生活リズムを安定させることが質の高い睡眠の土台になる。

「運動不足を解消して適度な疲労を感じることも睡眠の質を高めます。都心に通勤している会社員は、1日の平均歩数が9000歩というデータがあります。それがテレワークになると約2700歩と3分の1以下に減ってしまいます。運動不足の解消には下半身の血流をよくすることが重要なので、自宅でできるスクワットがおすすめです。また、意識的に『貧乏ゆすり』をするのも効果的です。下半身の血流をよくしたり、セロトニンの分泌を促してイライラを抑えるなど、ウオーキングと同じような効果があります」

 シャワーでなく、湯船につかるのも有効だ。冬が厳しく家にこもらなければならないフィンランドでは、血流をよくして運動代わりになるサウナが発達した。普段であれば湯船につかると疲労を助長してしまうが、いまは適度な疲労によって良質な睡眠につながるという。

 コロナと闘うには睡眠を整えよう。