【新型コロナ 今さら聞けない重大知識】#8

 3月に入ると、ある方から中国国家生物情報センターのサイトを教えていただいた。さっそくアクセスしてみると、そこには新型コロナウイルスが中国から世界中に広がるにつれて、ウイルスのゲノムが変化していくさまが系統図で示されていた。

 その系統図を見ると、湖北省武漢を発したウイルスはランダムに変異を繰り返しながら進化し、世界各地で150以上に変化している。パンデミックでウイルスが拡散と進化を繰り返していく様子を追跡したのは初めてではないだろうか。あらゆる国からウイルスをサンプリングして詳細に解析していることに、中国の凄まじいパワーを感じる。

 この系統図によれば、武漢で発生したウイルスのゲノムを最初に調べたのが昨年12月23日である。そして今年1月1日には別系統のウイルスが武漢で検出されている。やがて、これらのウイルスが武漢を飛び出し、8日にはタイへ、23日にはフランスと日本へ、25日に台湾へ、29日にはアメリカへと、わずか2週間ほどで全世界に広がっていったようだ。

 AP通信(4月15日)によれば、中国は春節(旧正月)前にウイルスがタイへ広がったことでパンデミックの可能性を認めたにもかかわらず、どこにも警告しなかった。そのためにパンデミックの引き金になったという。日本に感染者が現れたのも春節がスタートする直前だ。

 ところで、武漢の李文亮医師が、アウトブレークの可能性について警告したのは昨年12月30日。警察は同医師を処分して警告を無視したが、中国はその7日も前に、ウイルスをサンプリングしてゲノムを解析しているのである。

 新型コロナウイルスは武漢の市場で売られていたコウモリから感染したとされているのだが、学術誌「The Lancet」に掲載された論文では、同12月1日に初めて新型コロナウイルスに感染した人は、武漢の市場とは無関係であるとしている。

 また、米紙ワシントン・ポストは当時、武漢の市場でコウモリを売っていなかったことや、「中国は初期の新型コロナウイルスのサンプルをアメリカの専門家に提供していない」などと書いている。提供していないのは12月23日のウイルスなのか、それとも同1日のものなのか。それにしてもなぜ中国は提供しないのだろう? もちろん中国は、武漢の研究所からウイルスが漏洩した説は否定しているが、かといって納得できる説明もない。アメリカが調査を求めても中国は断るだろうから、恐らく原因はうやむやになるのだろう。

 しかし、今後の中国の行動と思惑次第では、ウイルスとの闘いが終わった後の世界がこれまでと違ったものになるかもしれない。=おわり

(奥野修司/ノンフィクション作家)