【人生100年時代の歩き方】

 在宅勤務を続ける企業が相次いでいる。カルビーは7月1日から工場などのスタッフは除き、国内社員の2割に当たるオフィス勤務の社員は在宅などのテレワークを原則にする。出社率は3割にとどめるという。日立も同様で、来年以降も在宅勤務を続け、出社率は5割にする方針だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大をキッカケに、働き方が大転換。在宅勤務の疑問も浮かび上がっている。カネや住まいなどについて気になる点を、働き方改革総研代表の新田龍氏に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

【Q1】
 在宅勤務になり、会社から「残業代は出ない」と言われた。給料は残業代分の15%くらい減っている。でも、定時には終わらない。残業代は請求できないのか?

【A1】
「結論からいうと、残業代は請求できる可能性があります。労働基準法第38条は、会社以外の場所で業務を行う場合、事業場外みなし労働時間制を採用できるとしています。その採用には、条件を満たす必要があって、その条件と社員の労働環境がどうなっているか。そこがポイントです」

 勤怠管理が難しい環境で、事前に就業規則や労働協約などで決められた時間を働いたと“みなす”制度が、事業場外みなし労働時間。1日8時間が一般的だろう。

【Q2】
 会社が残業代未払いの根拠にする「事業場外みなし労働時間」を採用する条件とは?

【A2】
「自宅というだけで、労働時間の算出が困難とはいえません。社員一人一人のPCに勤怠管理ツールを導入し、システム上で始業・終業を打刻させたり、在籍管理を行ったりできるほか、人気のウェブ会議ツールでは、常時通信可能な状態にして時間管理する方法も普及しています。つまり、みなし労働時間を採用する条件はその逆です。①PCなどの通信機器が、使用者の指示で義務化されていない、②業務の目標や納期を除き、具体的な仕事の進め方が社員にゆだねられている、というケース。ですから、メールやSNSなどで常に上司から指示が入る状況なら、みなし労働時間は採用できません」

【Q3】
 残業代を請求するには何が必要か?

【A3】
 請求手続きは、在宅勤務も通常の出勤も同じ。証拠集めが重要だ。

「労働時間を証明するための客観的な資料をなるべくたくさん集めておくことです。業務を開始した時間、休憩時間、終了時間のほか、SNSなどで上司や同僚とやりとりした時刻なども残しておいた上で、労働基準監督署に相談することです」

オンライン飲み会は自腹か経費か?

【Q4】
 オンライン飲み会の普及で、取引先の担当者と飲むことも。その経費は落ちる?

【A4】
 国税庁によると、交際費とは、法人がその得意先や仕入れ先など事業に関係のある人をもてなしたり、慰安したりするための支出としている。

「税法の規定に従うと、オンライン飲み会の費用も経費になります。しかし、運用は会社次第でしょう。たとえば、自宅の食材と一緒につまみや酒類を購入した場合、飲み会の分と線引きしてレシートを保管する必要があります。得意先にも同じようにしてもらうのは現実的に難しい。得意先を交えたオンライン飲み会の経費を会社が認める場合は『実費に限らず一定額を支給する』などと新たに社内規定を設けることが妥当です」

【Q5】
 去年までの新人歓迎会は会社負担でレストラン。今年は、自腹でオンライン。この経費は?

【A5】
「税法上は、福利厚生費として処理できます。これも会社の規定次第でしょう」

 ちなみに一口にオンライン会議といっても、そのやり方によって、精算する名目は変わってくるという。

「社内会議や得意先を交えた打ち合わせは会議費で、打ち合わせでもアルコールが入ると会議費にはならず、交際費です」

【Q6】
 定年まで残り5年。人とのつながりや親のことを考えると、実家近くの支社で在宅勤務したい。会社は異動を認めてくれるか?

【A6】
「本人のそれまでの働きぶりと評価次第です。『異動させても手放したくない』と会社が思えば、極力配慮してくれるでしょうが、そうでなければ難しい。しかし、在宅勤務の流れは中小企業を巻き込んで、今後も確実に広がりますから、希望を伝えておくのは大切です」

在宅勤務中に骨折、労災保険は認められる?

【Q7】
 在宅勤務が続くなら環境のいい郊外で暮らしたい。出社要請の翌日は大丈夫でも、緊急の出社には対応できないかもしれない。大丈夫か?

【A7】
「完全に本人都合であるため、自己責任で判断するしかありません」

 テレワークの普及で、社長自ら田舎に引っ越して仕事をしていると報じられたIT企業もある。前の質問と同様に、その人の能力が必要とされれば、可能性がないわけではないだろう。それでも取引先対応などを考え合わせると、新幹線や特急の停車駅近くが無難か。

【Q8】
 仕事に必要なPCのアクセサリーをネット通販で購入。受け取りに行こうとしたら、階段を踏み外して転倒し、後で骨折が判明した。労災保険は認められるか?

【A8】
 厚労省が作成した「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」には、在宅勤務での労災が認められたケースが書かれている。自宅で所定の労働時間内にPC業務を行っていた途中、トイレに行こうと席を離れ、仕事場所に戻ろうとして転倒したのが、それだ。

「労災認定には、そのとき業務をしていたかどうか、そのケガが業務を原因として生じたか、の2つが重要です。厚労省のケースは、仕事中のケガですから、どちらも満たしていますが、仕事に必要なものをネットで購入する場合は、会社や上司に経費申請を行い、承認が得られた上で購入すること。たとえ業務に必要な機材でも、承認を受けない私的な購入だと、業務起因とならない可能性があります。もう一つのポイントは、仕事中の受け取りかどうかです。その点については、パソコンに導入した勤怠管理ツールやメール、チャットのやり取り時刻などで判断されることになります。在宅勤務の労災認定では、業務時間と私的時間の区別が重要です」」

 朝、寝室からPCが置いてあるリビングへの移動中にコケてケガをしたら“通勤”途中のケガになるから、リアルの通勤と同じように労災と認められる可能性がある。しかし、昼休みにコンビニに弁当を買いに行く途中のケガは、業務時間ではないからアウトだ。