【「表と裏」の法律知識】#46

 先週に続いて、あおり運転厳罰化のことを書きます。今回の法改正では自動車だけでなく、自転車のあおり運転も厳罰化されました。といっても大半の方はピンとこないかもしれません。しかし、現に自転車のあおり運転は存在しますし、今後増えていくだろうと思っています。

 ここ数年、ロードバイクやクロスバイクといった高速走行が可能な自転車の利用者が増えています。加えて、新型コロナウイルス感染防止から、電車通勤をやめ、自転車を購入したり、レンタサイクルを利用するケースも増えています。さらに、Uber Eatsのような自転車による配達サービスも急増しています。

 ところが、自転車が走行できる場所はかなり限られています。道路交通法上、自転車は軽車両として車道の左側を走るのが原則です。自転車が走行できる場所が左車線(第1車線)の一部しかない状況では、自転車の並走や追い越しは非常に危険ですし、簡単ではありません。このように、自転車の走行できる場所はかなり限られている一方で、自転車利用者が増えてしまうと、当然起きるのが渋滞です。この渋滞に、自転車のあおり運転の誘発要因があります。

 通勤などに自転車を使う人は、急いでいますから、低速の自転車を追い抜くために、車間距離を詰めたり、横の間隔がほとんどない無理な追い越しをするケースもあります。このような危険な行為に対し、「天罰を下したい」という歪んだ正義感から、危険な運転を仕返すというのが、あおり運転の典型なのです。

 さらに自転車が第1車線と第2車線の間を走ったり、車の間を縫うように走行するケースも後を絶ちません。これに危険を感じた自動車側がとっさにクラクションを鳴らしてしまうと、自転車側が怒り、自動車の走行を妨害するというケースも現実に起きています。

 このような事態を見越して今回の改正道路交通法などによって、自転車のあおり運転の厳罰化がなされたのです。自転車であおり運転を行い、3年の間に2回以上摘発されると安全運転講習が義務付けられ、この講習を受けないと5万円以下の罰金が科されます。

 自転車に対する追い越しやクラクション、気をつけましょう。

(髙橋裕樹/弁護士)