新型コロナウイルスは家計を大きく変化させた。リモートワークが定着し、サラリーマンは自宅で過ごす時間が長くなった。朝起きると、顔を洗って歯を磨く。その後にヒゲを剃っていたが、自宅勤務だと無精ヒゲも悪くない。通勤していたころの朝食は牛乳とパンを慌てて流し込んでいた。それがいまや、ベーコンエッグと、バターをたっぷり塗った食パン、野菜サラダも食卓に並ぶ。コーヒーをゆっくりと楽しみ、パソコンに向かって仕事を始める。

 新しい生活習慣が家計の成り立ちを変えた。

 総務省が今月上旬に公表した5月分の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は25万2017円で、前年同月比で実質16・2%減少した。

「新型コロナの感染拡大により、旅行や外食が極端に減ったため消費が落ち込んだのは確かです。注目はコロナ以前とコロナ後の消費傾向が異なる点です。家食など巣ごもり関連は好調です」(市場関係者)

 総務省は新型コロナの影響が大きかった主な品目をまとめている。5月に消費が増えたのはパスタ(38・8%増=前年同月比、以下同)や即席麺(31・0%増)、チーズ(30・1%増)、チューハイ・カクテル(52・6%増)など(別表①参照)。総務省は「休校や在宅勤務の広がりによる巣ごもり需要や、外出自粛の影響」と分析した。電子レンジの支出が増加したのは「自宅でチン」が欠かせなくなったからだ。

「コロナ以降、消費はサービスからモノへと変化しています。5月もその傾向がクッキリしていると思います」(第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏)

朝食充実でベーコン、卵は好調

 サービス関連の宿泊料(97・6%減)や映画・演劇などの入場料(96・7%減)、遊園地入場・乗り物代(96・2%減)は前代未聞の減少幅だった。

 家計調査を細かく見ていくと“消費激変”が手に取るようにわかる。昨年と今年の「5月支出額」を単純に比較すると、朝食にベーコンエッグが増えたせいか、ベーコン(23・8%増)や卵(23・6%増)の支出は増加した。自宅勤務でコーヒー(15・0%増)を飲む頻度は増し、3時のおやつではチョコレート菓子(24・0%増)やスナック菓子(16・7%増)をよく食べる。

 休日は家族でホットプレートを囲んだ食事だ。みんなお好み焼きが好きなので、キャベツ(64・9%増)、豚肉(22・9%増)、小麦粉(81・1%増)、ソース(37・3%増)を頻繁に買う。ビール(18・2%増)や焼酎(23・5%増)も欠かせない。

 趣味の時間も増え、書籍(11・7%増)や園芸用品(35・9%増)の動きもいい。ゲーム機(29・8%増)も売れた(別表②参照)。

在宅勤務でネクタイ、靴下売れず

 一方、消費金額がガタ減りした品目もある。

 高齢者が買い物を自粛したためか、ようかんやまんじゅう、カステラの消費額は減った。自宅での食事が当たり前になり、コンビニのおにぎりを買わなくなった。スポーツクラブやジョギングも不可だったから、スポーツドリンクは飲まない。

 出社しない日が多く、ネクタイや靴下は買い足す必要がなかった。自宅ではメガネをかければすむし、ちょっと面倒なコンタクトレンズは使わない。髪も切らない。

 女性も同じだ。化粧水や口紅は不要。通勤がなく、オシャレをする機会が少なくなったからアクセサリーは身に着けなくていい(別表③参照)。

「移動制限などが解除された6月はサービス消費が復活したと思います。いわゆるリベンジ消費で、コロナ前の支出に近づいた印象を受けます。ただ、7月に入り再び感染者数が急増しています。自粛ムードが蔓延すると消費は低迷するでしょう」(熊野英生氏)

 4月の巣ごもり消費では店頭から小麦粉やパスタが消えた。コロナ第2波に警戒したい。