武藤が心情吐露「レッズの情報が入ってこないと知り合いに言われた」

(元川悦子/サッカージャーナリスト)

 <田嶋ショック>を機にJリーグ村井満チェアマンの記者会見がオンラインに切り替わり、鹿島や仙台もビデオ通信アプリを使ったメディア対応に踏み切るなど、サッカー界が揺れ動いている。その方式を真っ先に取り入れたのが浦和レッズだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大によってJ公式戦が最初に延期されたのを受け、3月1日から実施している。取材対応した元日本代表FW武藤雄樹は「少し壁があるような感じがして……みなさんもすごく難しいですよね」と報道陣をおもんぱかった。

「3月1日から練習後、ミックスゾーンでの取材対応は当面の間、休止とさせていただきます」

 浦和から報道各社に送られたメールには、こんな記載があった。「インタビュー全面禁止」かと思われたが、浦和広報は選手の感染リスクを下げつつ、メディアのニーズに応えるため、スカイプを使った質疑応答にスイッチ。初日のGK西川周作を皮切りに、毎日1人ずつが囲み取材に答えるようになった。

 当初は記者側から「希望選手の要望が思うように通らない」「なかなか自由に質問できない」といった懸念の声も挙がっていたが、日本代表主将の吉田麻也所属のサンプドリアで選手7人が感染したり、バルセロナなど名門クラブが活動休止に追い込まれる非常事態になって徐々に空気が変化。「話が聞けるだけでも有難い」といったムードに変わってきた。

 選手側も「本当は普段通りに発信したい」という思いがあるものの、クラブの判断に従うしかない。武藤は「記者のみなさんがいろんな選手の話を聞けないんで、取材がが大変じゃないかな、と。僕も今までと同じように近くで喋れたらいいと思うんですけど」と複雑な胸中を吐露する。

 もちろん、取材制限が加わることでサッカー情報の大幅減少は否めない。

「最近、知り合いから『あんまりレッズの情報が入ってこない』と言われたんです。サポーターさんがレッズの状況を知れない現状はつらい。レッズを生きがいにしている人が元気になれないんじゃないか、という残念な気持ちがありますね」と武藤は危惧していた。

 そんな選手側の意向もあったのか、浦和は3月19日からクラブ公式ツイッターによるライブ配信を通して、選手がファンの質問に答える企画「答えてレッズ」をスタートさせた。公式戦開催が見送られて「報道が減少してサッカーへの関心度は低下する」という悪循環に歯止めをかけようと、浦和を筆頭にクラブ側は今、試行錯誤を繰り広げているのだ。

■埼スタ周辺にもJリーグ延期の影響が

 ただし休止が1カ月に及んでいることで、地元経済へのマイナス影響はやはり出ている。

 浦和の本拠地・埼玉スタジアム周辺に出向いてみた。最寄り駅の浦和美園駅周辺は閑散とした状態。「試合がなく、テレワークで出社しない通勤者もいるので、鉄道利用者はかなり少ないです」と駅員は顔を曇らせた。

 イオンモール浦和美園は、休校中の小中学生でごった返しているかと思いきや、そうでもない。

「子供連れの方は日によりますが、例年の春休みに比べるとだいぶ少ないですね」と受付スタッフは言う。スポーツ用品店にいたっては、浦和と日本代表コーナーに足を運ぶ人が激減。春休みに予定されていたサッカー関係のイベントもキャンセルになった。「3月の売上げは大幅減。早くJと代表戦が再開されて、お客さんに戻ってきてほしいです」と店員は切実な思いを打ち明けた。

 仮に東京五輪が中止になったら、状況はより深刻になる。それだけはなんとしても避けたいというのが、地元の総意だろう。

 浦和としても、早期の公式戦実施を強く望んでいる。経営陣としては収入減を最小限にしたいはずだし、現場も「ACL出場権内」の目標達成に燃えているのだ。

 2019年はACLで決勝進出を果たしたとはいえ、J1では残留争いに巻き込まれ、まさかの14位。大槻毅監督も2月21日の今季開幕の湘南戦で経験豊富なDF槙野智章を先発から外すなど、大胆な競争原理を導入。チーム活性化を図っている。

「大槻さんは練習から競争をすごく意識させる監督。誰が出るか決まっていないので、自分も結果を出すしかない」と武藤も言う。彼は2019年10月18日の大分戦で右肩脱臼の重傷を負い、ようやく復帰したばかり。

「FWの(興梠)慎三さんや新加入のレオナルドが開幕戦で結果を出している。僕もリーグ再開時に結果を出して、競争に加わっていけるように頑張りたいです」と意気込みを新たにしていた。 大観衆が集まる聖地・埼スタのピッチで躍動したいという彼らの思いはいつ叶うのか……。

 25日のJリーグ臨時理事会で4月3日の再開の最終的に可否が決まる。まずはその動向を注意深く見守るしかない。