五輪の開催、運営に絶大な影響力を持つとされる米テレビ局が柔軟な姿勢をアピールした。

 2032年までの4大会合わせて約76億5000万ドル(約8500億円)の大型放送権契約を持つNBCユニバーサルの広報担当者が「現在は非常時で、前代未聞の状況。東京五輪のシナリオをより良くしようとのIOC(国際オリンピック委員会)の決断を全面的に支持する」と発言。IOCのバッハ会長が延期を容認したことに同調する姿勢を見せた。米経済紙ウォールストリート・ジャーナル(電子板)が伝えている。

 記事では、NBCが東京五輪開催の権限を持っているとしているが、広報担当者は「我々が五輪の開催時期をいつでも左右できるとの見方は間違っている」と、きっぱり否定した。

 NBCが、開催延期の検討に入ったIOCへの支持を打ち出したのは、アスリートファーストが念頭にあるわけではない。自社のビジネスを最優先したからともっぱらだ。

 USOPC(米オリンピック・パラリンピック委員会)は同日、東京大会の代表候補選手に行ったアンケート結果を公表。約93%が延期を求め、7%が中止を要望した。折しも23日までに、米国の陸上、体操、水泳などの主要競技団体が、IOCに延期を要請。競泳女子のケイティ・レデッキー(リオ五輪4種目金)、体操女子のシモーン・バイルス(同個人総合金)、陸上男子100メートルのクリスチャン・コールマン(19年世界選手権金)ら、金メダル獲得が有力視される多くの選手が、こぞって不参加を表明した。

■CM料金下落を防ぐべく先手

 NBCにとっても、競泳、体操、陸上は視聴率が稼げる有力なコンテンツだ。現状では米国内での代表選考会の開催すらままならず、仮に予定通り五輪が強行されれば、トップアスリートの多くは調整不足のまま出場を強いられかねない。米国選手が本番で振るわなければ、視聴率の低迷を招く恐れもあるだけに、NBCにとっても五輪開催を先送りした方が得策なのだ。

 今月上旬のNBCの発表によれば、東京五輪中継番組のCM枠は、ほぼ完売し、売り上げは史上最高額となる約1300億円に達した。延期や中止になっても、スポンサーへの補償は保険で賄えるため、同局には痛くもかゆくもないという。

 とはいえ、五輪中継のCM料金は直近大会の視聴者数次第では大幅に下落しかねない。今回、予定通りに五輪が開催されて視聴率が低迷すれば、24年パリ大会、28年の自国開催ロス大会のCM料金の下落を招く可能性があったため、NBCは先手を打ったのだ。

 商業主義もここに極まれりだ。