【松坂、筒香を育てた小倉清一郎 鬼の秘伝書】

「9月入学制」の議論が起こっている。

 米国など世界的にはこちらが大半で、この機会に日本も変更するべきという意見が多いようだ。導入されることになれば、高校野球も大きな影響を受ける。検証してみた。

 現在の甲子園は、3月のセンバツと8月に行われる夏の大会の2回。4月に入学すると、1年夏→2年春→2年夏→3年春→3年夏の計5度のチャンスがある。

 これは私案だが、9月入学の場合、まず秋の甲子園を11月に行う。この時期に開催される明治神宮大会は大学生のみとする。現状なら1年春のセンバツに入学式前の1年生は出場資格がないが、これなら入学2カ月後の11月の甲子園に出場できる。

 そして、気候のいい5月に甲子園を行う。「春」と呼ぶと今のセンバツのようになってしまうので、名称はあえて「夏」にしたい。3年生にとって、これが最後の大会になる。

 こうなると、甲子園は1年秋→1年夏→2年秋→2年夏→3年秋→3年夏の計6度。今より1度機会が増えることになるのはプラス材料だ。

 問題は開催が長期休暇中でないということだ。高校野球は教育の一環という大義名分があり、現在は春休みと夏休み中に開催している。11月、5月なら、いずれも授業がある。プロ野球が佳境に入る9月、ポストシーズンと重なる10月は、甲子園を本拠地とする阪神が貸してくれるかという問題が発生するが、11月ならシーズン後。5月はゴールデンウイーク期間を利用すれば、なんとかクリアできそうだ。近年は炎天下の8月に開催することが批判の対象となっている。これを機に真夏の大会を回避することもできるが、11月は休み期間ではないという点は、どうにもならない。

■ドラフトは春の大会後に高校生のみで

 横浜高の部長時代の2008年9月に、こんなことがあった。大分国体に出場した横浜は、夏の甲子園準決勝で敗れた優勝チームの大阪桐蔭と初戦で再戦。10―3で勝って4強入りを決めたものの、雨天中止が重なり、4強が出揃う前に大会の打ち切りが決定した。高野連によると、理由は「これ以上授業を休ませられない」だった。高野連が秋の甲子園を良しとするかが問題だ。

 プロ野球のドラフト会議は、現行の10月から高校生のみを5月の甲子園終了後から卒業する8月の間に行えばいい。9月入学の米国メジャーは6月で、これと同じ要領だ。ドラフトの時期はすでにシーズンが始まっているため、高卒1年目に16勝を挙げた松坂(西武)のような怪物を見ることはできなくなるが、それほど問題にはならないだろう。この国の決断に注目している。

 新型コロナウイルス禍も少し落ち着いてきた感があり、一筋の光が見えてきた。夏の大会は開催されると信じている。

(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)