25日に行われた今年のプロ野球ドラフト会議では、12球団合計で支配下選手登録74人、育成選手49人が指名された。

 その1人が、中日から1位指名された高橋宏斗投手(中京大中京高)。最速154キロの本格派だ。進学を志望し、AO(自己推薦制度)で慶応大学を受験したものの、不合格となり断念。一転、プロ入りに進路を切り替えた。

 慶大を受験して失敗といえば、思い出すのが巨人のエースとして活躍した江川卓氏だ。作新学院時代、栃木県大会で完全試合を成し遂げ、甲子園の選抜大会では20奪三振などを記録。「高校球界の怪物」と呼ばれた。

 その江川氏が進学を志望したのが慶大だった。当時の高校球界ナンバーワン投手だ。当然、慶大野球部も欲しい。とはいえ、その時代はAO制度がなかったため、受験して合格するしかない。そこで、同大の野球部員が江川氏の受験勉強を手伝ったという。江川氏と一緒に学んだ高校球児の中には、のちにプロ入りして中日などで活躍した中尾義孝氏(滝川高)や、近鉄(現オリックス・バファローズ)でプレーした堀場秀孝氏(丸子実業)もいた。

 当時、勉強を教えた野球部OBがこう話していた。

■30分と机に向かっていられなかった

「一番、真面目に勉強に取り組んでいたのは堀場だね。江川? 30分と机に向かっていられなかったな」

 勉強が嫌いだったのか、それとも「自分が落ちるはずがない」とタカをくくっていたのか。結局、江川氏は受験に失敗。法政大学法学部二部に進んだ。一方、中尾氏と堀場氏は一浪して慶大受験に再挑戦し、堀場氏は慶大法学部に合格。中尾氏は専修大に入学した。

 ところで、プロ野球の球団は選手を指名する際、学校の成績をどの程度、参考にするのか。広島カープや西武ライオンズで監督を務めた根本陸夫氏(享年72)が西武で選手獲得の責任者である管理部長をしていた時、こう言っていた。

「ドラフトで選手を指名する時に学校の成績表を見るかって? 高校生は見ないな。大学生は見るよ。大学生は現役を引退した後、球団のフロントとして採用することがあるから」

 学業が問われるのはユニホームを脱いだ後のようだ。

▽富岡二郎 スポーツジャーナリスト。1949年生まれ。東京都出身。雑誌記者を経て新聞社でスポーツ、特にプロ野球を担当。