ノムさんに届け−。阪神藤川球児投手(39)が恩師への思いを胸に今季初実戦のマウンドに上がる。14日、阪神が虚血性心不全で11日に死去した野村克也氏の「追悼試合」を検討していることが判明。15日広島戦、16日楽天戦(ともに沖縄・宜野座)の練習試合が対象で試合前には黙とうをささげ、喪章をつけてプレーする。16日に登板予定の守護神は特別な思いを明かした。

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今季初実戦は恩師にささげるマウンドになる。藤川の口から熱い思いがあふれ出た。「いつも(の気持ち)と変わるんじゃないですか。自分は阪神での1期生だから。最初のドラフトだったから。(野村氏から)こんなドラフト、知らんわって言われたけど。まあ、いい思い出ですね」。98年ドラフト1位で入団した藤川にとって、野村氏はプロ人生で初めて教えを受けた監督。自然と特別な感情がこみ上げた。

球団は早急に準備を進めている。「追悼試合」の対象となるのは15日広島戦、16日楽天戦の2試合(ともに沖縄・宜野座)。両軍がユニホーム左袖に喪章をつけて、試合前には黙とうをささげる。宜野座球場の大型ビジョンには、メッセージもしくは在りし日の映像を流す予定だ。すでに試合当日までに相手球団から承諾を得れば、実施できる段階。球団首脳は「哀悼の意を示しながらやりたいと思います」と語った。

特に野村氏が両軍で指揮を執った16日楽天戦では哀悼ムードが高まる。名球会入会条件の250セーブまで、「7」に迫る藤川にとっては、記念すべきシーズンの第1歩となる。10日のフリー打撃登板を経て、この日は2連投となったブルペンで力のあるボールを53球投げた。同氏の訃報に藤川は「人間教育をしっかりしていただいた。野球選手である前に一社会人であるという、すごくいい指導をしていただいた」と話していた。今季の“初戦”が恩師の「追悼試合」。白球を握る手にも自然と力が入る。

野村氏が阪神監督時代の99年に初の規定打席に到達するなど指導を受けた矢野監督にとっても特別なゲームだ。指揮官は「背負うことはできないけど、受け継いでいくことは出来ると思う。選手たちと一緒に成長していく姿を見せていけるような日々を過ごしていく、きっかけの試合になる」と見据えた。藤川は「心の中では生きています。会わなくても会えなくてもそういう意味では自分に教えは入っている。自分たちには指導は残っている」。天国で見守るノムさんに、全力のプレーを届ける。【桝井聡】

▼98年の野村監督と藤川 同年のドラフトで、阪神は当初、即戦力として上原(大体大)、二岡(近大)を狙っていた。だが、2人とも巨人を逆指名。阪神は方向転換して将来性を買い藤川の1位指名を決めた。野村監督はドラフト前に、同学年の松坂(横浜)に関連して「藤川君は中央では騒がれてないけど、松坂君に負けない気持ちが支えになって、いずれ逆転してほしい」とエールを送った。