<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム:四季オリオリ>

面白い存在がいる。オリックス育成ドラフト6位の大下誠一郎外野手(22=白鴎大)は、声が枯れるほど、グラウンドで元気を出す。

「ノック、お願いしまーす! ファースト! ファースト!」

背番号「006」を発見しなくても、その声でどこにいるのか、すぐに分かる。「自分は元気が1番。声でチームを引っ張れるような存在になっていきたい。苦しいときに、きつい顔はみんなできる。そのときに、どう盛り上げられるかを考えています」。

フルスイングが持ち味の右のスラッガーで、白鴎大では2年生で異例の主将に抜てきされた。仲間たちを鼓舞することができ、自分にも厳しい。「声を出すことでグラウンドでも目立てる。自分は育成なので目立ってナンボ。最後まで続けていきたい」。年齢は若いが、3年で1度自由契約になる育成契約選手、かつ大卒とあって、勝負できる時間はそう多くはない。

頑張る理由がある。白鴎大足利高3年のとき、福岡・北九州市に住む父一雅さんが脳内出血で倒れた。妹が2人いる。「自分が支えないと」。そう決意してプロの世界に飛び込んだからだ。

練習後のユニホームは泥だらけ。マシン打撃を終えた打撃手袋は破れている。「とにかく結果を出すことが第一優先。大卒からの育成なんで、時間もないんで…。1日1日で、勝負をかけないと。その考えでしか毎日やってないですね」。

宮崎での春季キャンプでも、大下の言葉にうそはなかった。全体練習後、室内練習場のマシンを使ってひたすら打ちまくった。チーム宿舎に戻るバスの最終便の出発直前まで、ずっと続けた。見守った警備員が「もうすぐバスの時間なんですけど…」と心配するほど夢中でバットを振った。

「入団してから(キャンプで)フォームを変えてやってきた。やっと結果が出てきたかなと思う」

打席で構えた際、バットのヘッドが投手方向に入る。その癖を矯正した。「つかんだ感覚を離さないために。みんなが休んでいても、自分はやるしかない」。キャンプ中には1軍練習に参加し、1軍の試合にも出場した。「自分のスイングで結果を出していきたい」。171センチ、89キロのずんぐりした体つきから力いっぱいのスイングを披露した。「球の速さと変化球のキレが全然違うんです…」。ヒットこそ出なかったが、収穫はあった。

キャンプ後は2軍戦で5番や7番に座り、存在感を示している。18日の阪神戦(オセアンBS)では藤浪から右前適時打。20日の対戦でも新外国人のガンケルから左前適時打と左翼フェンス直撃の二塁打を放った。中嶋2軍監督は「元気もあるし、使いたくなる選手。やることは、まだまだいっぱいありますけど、打つ方はだいぶ上がってきた。そうなると次は守備、走塁が課題になる。まだ、これから試合に出て、学んでくれれば」と評価した。

守備位置の登録は外野手だが、一塁と三塁も守れる。動きもスムーズで、正確なスローイングにも定評がある。元気な声で、何本もコーチのノックを受けた後には、またバットを持つ。室内練習場では、黙々と快音を鳴らす。

「やっぱり、打たんと。みんなよりも、練習やらんとダメなんで。努力するしか、自分にはないんです」

ひたむきに流した汗は、うそをつかない。【オリックス担当=真柴健】