ソフトバンク小久保裕紀監督(52)が10日、ファーム選手の「とある考え方」に警鐘を鳴らした。福岡・筑後市のファーム施設を訪れ、シーズン中は2度目となる視察を実施。「柳田2世」こと笹川吉康外野手(21)が「去年の秋の良かった状態に戻らない」と話していたことを明かし、その話題について数分間、熱弁をふるった。

「去年の秋、良かったって言っても、それは2軍で一瞬良かっただけ。それと比べたらそれ以上がない。百歩譲って、1軍でホームラン王を取った選手ならそこを目指してもいいけど。2軍で最後に2割8分打った時に戻したら、それでは1軍でレギュラーは取れないですよね。根本的な考え方として。だから特にファームにいる選手が、自分の良かった時に戻そうという発想は絶対にやめた方が良い」。

昨季までの2年間、2軍監督を務めていた小久保監督。「去年2軍監督をやっていたときに一番感じたことなので」と説明。この日は松山2軍監督とも、その話題について議論したという。

現役時代、小久保監督も同じ経験をした。「僕も最初は打点王を取ったときのフォームとかホームラン王を取ったときの映像を見たりしてやったけど、戻らなかった経験がある」。当時の王貞治監督(現球団会長兼特別チームアドバイザー)に「○年型を作れ」と口酸っぱく言われたという。「自分の過去の良かった時の打ち方には戻らないと。なぜなら、細胞も変われば考え方も経験も変わっている。同じに戻るわけがない。でもみんな戻りたがる。その時のベストを探す方が近道だと教わった」。苦い経験が、今の指導理念につながっている。

「(自分は)一応、タイトルを取ったからしたのであって。2軍選手がすることじゃないよねっていう。そこに気づいた方が良い。それは松山さんとも全く同意見だった。そういう発想で、いかに自分のいいものを作り上げていくか」。2軍監督時代、ともに汗を流してきた“小久保チルドレン”に期待を寄せているからこその、厳しい言葉だった。【只松憲】