リバプールFW南野拓実(25)がプレミアリーグで優勝を飾り、地元大阪も沸いた。日本人のプレミア制覇は岡崎慎司(レスター)以来4人目の快挙だった。

南野が幼稚園から小学校卒業まで約8年間在籍した、ゼッセル熊取FC(大阪・熊取町)の杉山恵三代表(49)は「サッカー選手はまず、所属先で結果を残すのが基本。このコロナ禍の状況で大変なシーズンだったでしょう。それでも拓実が優勝に貢献できたことは、この熊取町の、小さな町クラブにとって誇りです。心からおめでとうと言いたい」と喜んだ。

人口約4万4000人が住む熊取町は大阪府泉南郡にあり、関西国際空港からJRで約15分。南野が生まれた泉佐野市と隣接する。かつて高校野球で甲子園を沸かせた浪商(現大体大浪商)もあり、野球が盛んな土地柄でもあった。

そこに80年代から、前身時代を含めてゼッセル熊取FCが活動を始め、世界の玄関口から南野が羽ばたいていった。同期にはFC東京DF室屋成(26)がおり、小さな町クラブから、同時に2人の日本代表を輩出したことになる。

南野は小学生時代、02年ワールドカップ(W杯)日韓大会で得点王と世界一に輝いたブラジル代表のFWロナウドが大好きで、家族が作成した「ロナウド得点集」のビデオテープをずっと見ていたという。

「幼稚園時代、サッカーのビデオを全員で見ていても、拓実だけは最後まで集中して見続け、見るのを飽きて騒ぎ始めた友達に『うるさい!』と注意していました。小学生の時は、試合で途中交代させたら『なんで俺を下げるの?』と、大人の私に言ってくるんです。うまい選手は大阪にもなんぼでもいるんですが、ハートの強さや自己アピール力、コミュニケーション能力が当時から群を抜いてあった。だから海外移籍しても、きちんと自分を表現できて、成功したのだと思います」

そう振り返る杉山代表が小学校3年まで指導。その後、指導を引き継いだ比嘉陽一コーチ(38)は「拓実は努力する天才だと思います。試合中に自分のボールを奪われたら、本気で取り返しにいく。雨で試合が中止になっても、その中でボールを蹴り続けていた。その努力があるから、リバプールでの今があるんです」。基礎を教え込まれ、中学からはセレッソ大阪の下部組織へと進んだ。

南野が今年1月、ザルツブルク(オーストリア1部)からリバプールへ移籍した際、移籍金は約11億円生じた。同時に国際サッカー連盟(FIFA)の規定で、12〜23歳まで在籍して南野を育てたクラブには連帯貢献金(いわゆる育成費)が発生。リバプールからゼッセル熊取FCには、12歳時(小6)に在籍したことで286万円が支払われた。世界に通用する人材を育てた証しになった。

クラブには現在、全部で約260人の児童らが在籍する。新型コロナウイルスの影響で3月から活動を休止させ、収入が途絶えたことで一時は経営難に陥った。クラブ存続のためにも南野は、古巣へビデオメッセージを送って児童やスタッフを励ましてくれた。

「今後は日本代表の活動もより注目されるし、頑張ってほしい」と杉山代表。比嘉コーチは「拓実がいるからリバプールを知った子どもたちは多い。これからもいいお手本でいてください。世界での活躍が一番の楽しみです」とエールを送った。【横田和幸】

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◆ゼッセル熊取FC(大阪・熊取町) 02年にNPO法人を認証取得したゼッセル熊取アスレチッククラブが運営する、幼児から中学生を対象にしたサッカークラブ。杉山代表が80年代から幼児体育のサッカースクールを発足させ、現在の基盤に。出身Jリーガーは東京DF室屋成(26)、ガンバ大阪GK一森純(29)。「ゼッセル」はドイツ語で「椅子」の意味。

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◆連帯貢献金 FIFAが01年に定めた規定。国際移籍をする有望な選手を育てたクラブが、その育成費として移籍先から金銭を受け取れる制度。移籍金の5%が連帯貢献金になり、うち12〜15歳時の所属先が1年あたり0・25%を、16〜23歳時の所属先が同じく0・5%を受け取れる。南野のリバプール移籍で生じた連帯貢献金は、ゼッセル熊取FC(12歳=小6時の1年間)C大阪(20歳までの8年間)ザルツブルク(23歳までの3年間)が対象。移籍金推定約11億円超の5%を、3クラブに分配された計算になる。