米国水連は20日、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)に対し、東京五輪の1年延期を要望するように書簡を出した。選手の健康不安や練習環境の悪化によって公平な競争ができないことが理由。競泳は米国で絶大な人気を誇り、国際オリンピック委員会(IOC)に多額の放映権料を払う米テレビ局NBCにとって、五輪放送の目玉コンテンツ。米国水連の延期要望は一競技団体の枠を超えて、今後に影響を及ぼす可能性がある。

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五輪延期への大きな流れにつながるかもしれない。米国水連が、USOPCに対してIOCへの延期要望を出すように書面を出した。「2020年東京五輪の1年延期を働きかけるように、求める。完全な答えはない。簡単でもない。だがこれは具体的な道筋を示す解答であり、すべてのアスリートは2021年に安全で成功が見込めるオリンピックに準備することができる」とした。これに対して、USOPCは同日、通常開催を目指すIOCの立場を尊重した上で「あなたたちの懸念を明確に伝えます」と、報告を約束した。

関係者は「まさか米国水連が延期を求めるとは。このインパクトは大きい」と驚く。競泳は米国にとって五輪の花形種目、テレビ視聴率も高い数字を稼ぎ出す。米NBCは、競泳を米国のゴールデンタイムに合わせるために、IOCに働きかけて東京五輪の午前決勝を実現させた。アスリートファーストに沿う夜の決勝を求めた国際水連と日本側を押し切った。関係者は「米国選手も夜の決勝がやりやすいはず。自国選手のパフォーマンスを犠牲にしてでも、テレビ中継にこだわった」という。米国水連が否定的な立場を貫けば、米NBCは約11億ドル(1155億円)の放映権料に見合うほどのメリットが得られなくなる可能性がある。

米国は、五輪代表選考を兼ねた全米選手権(6月21〜28日、ネブラスカ州オマハ)を予定。一発勝負の同選手権まで3カ月を切るも練習場の閉鎖など、練習環境は悪化の一途をたどる。同選手権は1大会でその年の米国水連の年間運営費を稼ぎ出すというビッグイベント。米国水連にとって、東京五輪の1カ月前、同選手権を公平な形で行えるか、焦点になる。関係者によれば「競泳王国」米国の動きにオーストラリアなど他国が追従する可能性もある。通常開催を掲げるIOCだが、米NBCの目玉コンテンツを構成する米国競泳陣の延期要望は大きな変化をもたらす可能性がある。