<ウイルスと闘う世界の国から(7)韓国>

本来なら韓国は、選挙一色だったはず。4年に1度の国会議員を選ぶ総選挙が4月15日に実施される。与党の共に民主党の優勢が予想されるが、保守派野党の未来統合党は「過半を占めたら文在寅大統領を弾劾する」と無謀な主張で、保守勢力の集結を呼び掛けている。しかし街中に人がいない。知名度の低い新人は顔を覚えてもらうことが大事だが、マスクをつけているため「顔」が伝わらない。出勤時間に候補者が駅前であいさつしても、名刺を受け取らない。握手もなしだ。

韓国は新型コロナウイルスへの対応に積極的だ。15年の中東呼吸器症候群(MERS)への反省が生きているからだ。当時は消極的な対応で大事な情報を隠し、社会的混乱を避けようとした。結果、サウジアラビア以外では最多の死者(39人)を出した。今は感染者の動きなど、多くの情報を公表している。

検査も積極的に実施。すでに国民の200人に1人にあたる25万人以上を検査した。この取り組みにより、危機感から経済に影響し、批判もあった。しかし米国下院で高く評価され、WHOやドイツなど欧州諸国でも推奨されるなど、国内より海外で好評。さらに検査キットが世界に輸出されるなどし、文大統領の支持率は残り任期2年あまりの大統領にしては珍しく50%を超えている。

感染者の8割以上が大邱市とその周辺地域に集中している。大邱などの「新興宗教の新天地イエス教証しの幕屋聖殿(略して新天地)」の信者に感染者が多く、政府は同地域を特別災難地域に指定した。

サッカー界も直撃した。当然、Kリーグ開幕は延期になった。他のチームは練習試合を行うなど、1カ月以上遅れの開幕へ調整しているが、FC大邱は全選手、全スタッフが監禁状態。同市内のグラウンドに隣接する合宿施設に1カ月以上も缶詰めになり、外部との接触はできない。テレビ局との画像インタビューで「恋人に会いたい」と訴える若い選手もいる。

学校は毎年3月初旬が始業式だが、1カ月延期になった。各自治体の判断で、カラオケや一部飲食店などの規制も始まっている。当然、株価が下落し、街の活気もなくなった。だが、未知のウイルスに国を挙げて対抗しようとする政府の試みに、半数以上の国民が賛同するなど、大きな混乱はなさそうだ。【ソウル出身・盧載鎭】