社員がいきいきと働き、高いパフォーマンスを発揮する職場をつくるには何が必要か。産業医として多くの企業で社員の健康管理をアドバイスしてきた茗荷谷駅前医院院長で、みんなの健康管理室代表の植田尚樹医師に、具体的な事例に沿って「処方箋」を紹介してもらいます。

過敏性腸症候群(IBS)は腸の疾患としては一般的なものといえます。大腸や小腸に原因となる異常が見つからないのに、腹痛や下痢、便秘が長く続きます。大きく「下痢型」と「便秘型」の2つに分けられますが、なかには下痢と便秘を交互に繰り返す人もいます。

過敏性腸症候群の原因としては、ストレスや腸の機能異常、腸内の炎症などが考えられていますが、まだはっきりとは分かっていません。次のような症状が認められるようなら、ストレスが原因かもしれません。

・仕事が忙しいときに症状が出る
・通勤通学の途中に症状が出る
・職場の異動、転職など、生活上の大きな変化があった
・試験や会議など緊張する場面で、症状が悪化する
・気分の落ち込み、不眠、頭痛、肩こりなどがある

こうした症状は、主にストレスなどによる自律神経の失調が原因と考えられています。自律神経は自分の意思でコントロールできない神経で、緊張時や興奮時に活動が活発になる「交感神経」と、リラックス時に活発になる「副交感神経」の2つがあります。それぞれが、本来はそぐわない状況のときに、過活動を起こしたりするのが自律神経失調症です。

ストレスから自律神経がバランスを崩し、腸の動きが活発になったり逆に鈍くなったりして、下痢や便秘、腹痛を繰り返す。こうした症状が続くことで、さらに不安や抑うつ症状を招くこともあります。実際、私が産業医として面談した休職者にも、過敏性腸症候群とうつ病を併発している人が少なからずいました。

■腹痛で2駅ごとに電車を降りる

外資系金融機関に勤める30歳代男性の事例です。

勤怠不良が見られるため、上司に産業医との面談を勧められました。夜眠れず、落ち込みがちなうえ、出勤時たびたびひどい腹痛に襲われ、遅刻や欠勤を繰り返していました。出社前、トイレに30分から1時間ほど籠もることもしばしば。特に通勤電車では乗っただけで動悸(どうき)が激しくなり、腹痛のため2駅ごとに列車を降りてしまうほどでした。週末にこうした症状はないといいます。