3月19日からWOWOWにて放送開始した「陳情令。全50話。1回に4話ずつ放送し“まとめ見”のニーズにも応える。写真左がワン・イーボー、右がシャオ・ジャン。

3〜4月、WOWOWでは中国の旬の若手俳優が主演する時代劇の放映が相次いで始まった。これまで同社が放映してきた中国ドラマは、歴史・宮廷ものなど重厚な作品が多かった。新たに狙うのは若年層。ファン拡大を仕掛ける。

3月19日から始まったファンタジー時代劇ドラマ『陳情令』は、中国での動画再生回数は64億回を超え、2019年の中国でのウェブドラマ1位を記録した(19年11月時点、guduomediaより)。

主役は眉目秀麗の男性2人。このドラマの原作『魔道祖師』は、15年に発表されたBL(ボーイズラブ)小説だ。日本でのドラマの版権を持つソラシア・エンタテインメントのプロデューサー・時墨悠希舞(ゆきずみゆきまい)氏は、ウェブで小説を読み、ドラマ放映前から版権の獲得に動いたという。

「16年の連載終了後も人気は根強く、『この作品を読んだら他の作品は読めない』という人が続出するほど、熱狂的なファンを生んだ小説です」(時墨氏、以下同)。

同作は、アニメやマンガ、ラジオドラマ等に展開されたが、中国外での人気に火をつけたのは、18年に中国の大手動画配信サービス「テンセントビデオ」で配信されたアニメだった。「東南アジアや韓国、欧米にもファンが広がり、趣味でイラストを描いてネットに公開する“絵師”さんの作品を通して、オリジナルアニメを知る動きもあったようです」。登場人物が持ち歩く剣や琴、笛などを擬人化して描くファンもいるという。

物語の舞台は、古代中国の架空の地。やんちゃで楽観主義者の魏無羨(ウェイ・ウーシエン)と、ストイックで寡黙な藍忘機(ラン・ワンジー)は、ある出来事をきっかけに強い絆で結ばれる。怪事件の真相究明に立ち向かった2人は、邪悪な陰謀を知るが……。

緻密なストーリーに加えて、熱狂を呼んだのが、深く繊細になされたキャラクター設定だった。「善悪を二項対立で描かず、悪人であっても、たまたまそうならざるを得なかった運命として描かれる。そのため、主役だけでなく脇役のキャラクターにもファンがついている点も大きな特徴です」。これは日本で大ヒット中の『鬼滅の刃』などにも見られる傾向だ。

「実は中国ではBL的な同性同士の愛情の描写に厳しい規制が入るため、ドラマで描かれるのはあくまでも“友情”です」。しかし、原作を理解する女性プロデューサーが脚本を監修し、原作ファンも満足できる仕上がりに。さらに、男性同士の友情ドラマとして、男性視聴者もつかんだという。

主演は28歳のシャオ・ジャン(魏)と23歳のワン・イーボー(藍)。2人はこの作品の大ヒットで、一躍スターの座に躍り出た。特に、シャオ・ジャンは、エスティ・ローダーなどとの広告契約を新たに結ぶなど、人気は急上昇。19年の中国商業価値ランキング(メディアリサーチ会社・芸恩諮詢、市場調査会社・艾漫数据調べ)では、総合2位に入った。

同ランキング1位のイー・ヤンチェンシー主演の時代劇『長安二十四時』も、4月から放映が始まった。イー・ヤンチェンシーは中国のアイドルグループTFBOYSのメンバーで、俳優としても高い評価を得る19歳。舞台は唐代の長安。もともとは罪人を捕らえる役人だった死刑囚と、長安の治安を守る役人の2人がタッグを組み、24時間後に爆破テロを企てるテロリストの陰謀を阻止すべく戦う物語だ。

韓国や台湾のドラマは、アイドルや若手俳優の作品から日本でのファン層が拡大し、定着につながった。2つの作品から、中国ドラマにも新たなムーブメントが生まれるかもしれない。

(日経エンタテインメント!4月号の記事を再構成 文/横田直子)

[日経MJ2020年4月24日付]