障害を持った人が職場で働き続けられるよう、専門家が現場に定期的に出向いてアドバイスをする「ジョブコーチ」制度の活用が定着し始めた。生産現場や事務職場での動線や労働時間、休憩方法など実際の雇用管理に即した助言をするのが大きな特徴だ。

「体調はどうですか。ヒーターの温風は届いているみたいですね」

昨年12月初旬の栃木県那須塩原市。メッキ加工業の日本プレーテックで、脳出血の後遺症で半身にしびれが残る蓮実敬三さん(61)がジョブコーチの小林光江さんの訪問を受けていた。蓮実さんの担当はメッキ加工ラインの最上流工程で、部品を固定する治具にかける仕事。小林さんと言葉を交わす表情はにこやかだ。

小林光江ジョブコーチ(左)の助言を受けながら職場に復帰した蓮実敬三さん。及川勝彦日本プレーテック取締役(右)が見守る(19年12月、栃木県那須塩原市)

蓮実さんは2017年10月に自宅で脳出血に襲われた。当時は同社の物流部門の中型トラック運転手。リハビリを進め関係機関で復職指導を受けたが、職業ドライバーを続けるのは無理との及川勝彦取締役らの判断で、今の仕事に移った。

コーチの小林さんは厚生労働省の外郭団体である高齢・障害・求職者雇用支援機構の栃木支部(宇都宮市)職員で、もう一人のコーチと組んで会社を訪問する。蓮実さん、及川取締役と面談を繰り返して環境を整え職場定着を図っている。

及川取締役と小林さんによれば、蓮実さんの半身にしびれなどが残る中で、就業場所の広さや治具に部品を掛ける動作などを見直し、業務環境でいくつもの改善をしたという。

ジョブコーチは国や自治体が設ける制度。国のコーチは障害者雇用促進法と雇用保険法施行規則に根拠があり、正式名称は「職場適応援助者」。小林さんのように高齢・障害・求職者雇用支援機構に属する配置型コーチのほか、社会福祉団体に属する訪問型、企業在籍型の3つの類型がある。

主な業務は障害者本人と職場の間に入ってアドバイスすること。機構の場合、復職後3カ月は毎週1回など集中的に指導を行い、その後1年は指導の頻度を徐々に減らしながら「徐々に身を引いていく」(小林さん)という。

厚生労働省によると現在全国に1067人のコーチが稼働している。機構の配置型コーチは全都道府県で312人。企業と障害者本人の希望と同意がある場合に無料でサービスを提供している。コーチを受け入れた及川取締役は「会社として配慮はしているが、これからも本人の考えや業務にどう適合しているかを聞きとってほしい」と期待する。

ただ、企業や本人と意思疎通がうまくいかず支援が奏功しないこともある。また、金融機関や個人データを扱う職場では受け入れを断られることが多い。