「自宅で最期を迎えたい」「延命治療は希望しない」など終末期の医療について患者や療養者が事前に話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の定着に向け、本人の意思を地域の医療・介護現場で共有する環境づくりが注目されている。専門家は「望む最期を地域で実現させる体制が必要だ」と訴えている。

千葉県松戸市ではケアマネジャーや生活相談員を対象にACPを学ぶ研修も行われた

ACPは人生の最終段階の治療・療養の意思決定を支援するための家族や医療関係者らとの話し合いを指す。厚生労働省が2018年に改定した終末期医療の指針に盛り込み、「人生会議」の愛称で普及を進める。ACPは対話を繰り返し、自らの意思を伝えられない状態になっても思いを推定できる形を目指す。

本人の意思を文書化する事前指示書の作成は本人が専門的な治療内容を十分理解して事前に判断するのは難しい面などがある。そのため本人が自身の価値観を共有し、医療・ケアを選ぶ手法に関心が向いている。

「人の価値観は多様。いかに本人らが納得できる道を探る活動だ」と説明するのは、慶応大医学部講師で在宅看護が専門の山岸暁美看護師。千葉県松戸市で19年まで4年間、医療や介護が連携する地域包括ケアシステムにACPを組み込む文部科学省の研究事業「ふくろうプロジェクト」を代表として主導した。

プロジェクトは市の高齢者支援課、消防、医師会、ケアマネジャーの団体などの共同事業。身近な市内のケアマネジャーや生活相談員約300人が本人や家族にACPの重要性を伝え、話し合いのかじ取り役を担った。

ケアマネジャーらは本人の意思を聞き取り、「緊急時連絡シート」に持病、家族や主治医の連絡先などを記入。望む医療や療養の意向を尋ねるチェック欄もある。本人の思いは治療の状況などで変わるため、定期的に見直す。

希望しない救急搬送を避ける目的もある。約1千人分のシートの内容は服薬情報と合わせてデータ化され、医療機関や介護施設などと共有。QRコードにしたステッカーを各家庭の冷蔵庫に貼り、駆けつけた救急隊員が意向を確認できる仕組みを整えた。

プロジェクトは市内の約半分の地域を対象とし、それ以外の地域に比べて希望通りの最期を迎えられた割合は2倍を上回った。