全国の自治体で自転車保険への加入を義務付ける条例の制定が相次いでいると聞きました。どんな背景があり、どう対応すればいいのでしょうか。

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多くの自治体で自転車保険への加入を義務付ける動きが広がっています(図)。例えば神奈川県は4月に「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を施行。周知期間を経て10月から自転車の利用者やその保護者に対して、保険加入を義務付けました。東京都は9月に関連条例を改正し、2020年4月に施行する予定です。

加入義務条例を都道府県単位で初めて施行したのは15年10月の兵庫県です。きっかけは同県内で起きた自転車事故を巡る裁判でした。小学生の男児が高齢の女性を自転車ではねて寝たきりにさせてしまった事故について神戸地方裁判所は13年7月、男児の母親に賠償金約9500万円の支払いを命じました。

自転車事故の裁判では数千万円から1億円近い賠償を命じる判決が、その他にも出ています。賠償金が高額だと加害者側が払いきれず、被害者側がより深刻なことになりかねません。そうした事態を防ごうと、一部の政令市を含めて、保険加入を義務化する自治体が増えています。

その一方で保険加入は十分進んでいないのが実情です。警察庁によると、17年に全国で自転車で衝突するなどして歩行者が死亡したり重傷を負ったりした事故は299件あり、このうち、運転者が保険に入っていたケースは約60%でした。今年に入り、国として保険加入を義務化できないか国土交通省で検討されましたが、実現していません。

自転車事故による他人への賠償責任を補償する保険としては、損害保険各社が専用商品を扱っています。補償額は1億円程度とする例が多く、月100円ほどの保険料で入れるタイプもあります。自転車販売店で有料の点検整備を受けて加入する商品(TSマーク付帯保険)もあります。

そのほか、火災保険や自動車保険などには個人賠償責任補償といって、自転車事故を含め他人への賠償責任をカバーする特約が付くことがあります。この補償も加入が義務化される保険に含まれます。またクレジットカードに付帯する保険もあります。

ファイナンシャルプランナーの平野敦之さんは補償額について「家族の自転車の利用実態に合わせて決めたい」と話します。自転車を毎日の通勤に使う、子どもが乗り始めたばかり、といった場合は「補償は無制限か1億円は必要」と助言します。

万が一事故を起こした場合、実際の賠償金額を上限として保険金が下ります。複数の保険や特約に加入していた場合でも、賠償額を超える額は受け取れないので補償の重複には注意しましょう。まずは今、入っている保険で自転車事故への備えができているかを確認し、不十分なら補償の上乗せを考えましょう。

[日本経済新聞朝刊2019年12月7日付]