東京臨海部に地下鉄? 相次ぐ新線構想、本命はどれ

東京の鉄道新線構想がにわかに動き出した。豊洲―住吉(江東区)を結ぶ東京メトロ有楽町線の延伸や羽田空港と都心を結ぶ羽田空港アクセス線で具体的な検討が進む。さらに豊洲へ移転した築地市場の跡地に都心と臨海部を結ぶ地下鉄の構想も浮上する。くしくも新旧2つの市場が新線構想を動かしている。

都が先月発表した築地市場跡地のまちづくり方針の素案。ここで示したのは2040年代の将来像だ。23ヘクタールと広大な開発とはいえ、なぜ20年も先なのか。実はこの案、跡地を通る新たな地下鉄の開業を織り込んでいる。

「築地再開発は地下鉄の新駅ができて完成形だ」。都幹部は強調する。タワーマンションが林立し、東京五輪の選手村のマンションも建設中の臨海部。人口が急増する半面、ネックは交通網だ。都はバス高速輸送システム(BRT)を計画しているが、膨れ上がる需要を賄うには荷が重い。

本命は地下鉄だ。国土交通省の交通政策審議会が16年に出した答申では、臨海部から東京駅付近まで地下鉄を通し、秋葉原から延伸したつくばエクスプレス(TX)と直通運転させる構想が示された。ある都庁OBは「臨海部の開発を進めてきた都が最も取り組むべき路線だ」と指摘する。

築地の地下に線路や新駅を設ける空間を確保したままどうやって開発を進めるか。都は再開発と並行し検討を進める。

「市場新線」は当面先だが、都内には検討が進む新線がいくつかある。

例えば豊洲―住吉を結ぶ有楽町線(8号線)の延伸だ。この区間はタワーマンションの開発で人口が急増。周辺を走る東京メトロ東西線やJR総武線の混雑率は200%近い。延伸は地元・江東区にとり長年の悲願だ。

この8号線が昨年来にわかに現実味を帯びてきた。震源地は昨年10月に開場した豊洲市場だ。

「8号線が最優先だ」。昨年6月、東京都庁。江東区の幹部が都の幹部に詰め寄った。区が市場移転を受け入れる条件のひとつだった豊洲のにぎわい施設は、運営事業者の撤退問題で開業が五輪後にずれ込んでいた。

にぎわい施設で約束を守れなかった埋め合わせをどうするか。都は円滑な豊洲移転に向け、区に譲歩した。江東区が移転に協力する代わり、都は8号線の実現に汗をかく――。その後の区議会で、都は8号線の事業枠組みを決めるメドを「18年度中」と明言した。

焦点は1500億円とされる事業費の分担だ。東京メトロは新線を自ら建設しない方針。有楽町線についても「整備主体となることは極めて困難」との立場だ。メトロの幹部は「都と区の話は事前に聞いていなかった。都は一体どうするつもりなのか」と困惑する。

江東区は都や区などが出資する第三セクターが整備し、東京メトロが運行する「上下分離方式」を想定する。メトロがかねてめざす株式上場や他の新線構想もからみ、駆け引きは本格化する。

都が優先的に検討を進める新線は8号線を含めて6つある。本命視されるのはJR東日本が29年度にも開業をめざす羽田空港アクセス線だ。羽田と都心を3つのルートで結ぶ計画で、このうちの1ルートについて、JR東は環境影響評価に着手すると発表した。開通すれば、東京駅から羽田空港までの所要時間は従来の30分前後から約18分に縮む。

都は今年度、新線の財源となる基金をまず620億円で設けた。今後は都が半分弱を持つ東京メトロ株の配当金を毎年積み立てる。6つの新線はこの基金を奪い合う関係にあるといえるが、都幹部は「1つだけ先に決めると他との関係が持たない」と頭を悩ませる。

都内の新線レースを勝ち抜くのは有楽町線か羽田空港アクセス線か、それとも別の路線か。「我田引鉄」の駆け引きは事実上の期限となった春に向けて激しさを増す。

(安部大至)

[日本経済新聞朝刊2019年2月8日付を再構成]


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