新製品が出る度に、さまざまな新技術を採用する高級炊飯ジャー。その中で、南部鉄器を採用した内釜「極め羽釜」で人気を得ていたのが象印マホービン(以下、象印)だ。ただ2018年、その南部鉄器の内釜をやめてしまう。長年販売し続けた南部鉄器をなぜやめたのか。そしてその代わりに採用した新しいIH構造は何が優れているのか。そして発売から約1年半が過ぎた今、路線変更は成功したのか。家電製品をレビューするために、一軒家を用意した家電プロレビュワーの石井和美さんが、開発に携わった三嶋一徳さんに話を聞いた。

■限界が見えた内釜へのこだわり

――炊飯ジャーをずっと見てきた人間にとって、象印の炊飯ジャーといえば南部鉄器という印象が強いです。重厚感のある釜が特徴的でした。しかしそれを18年に潔くやめてしまったのにはとても驚きました。

「炎舞炊き」の開発に携わった三嶋さんは1987年大阪府生まれの32歳。2011年に象印マホービンに入社し、電気ポットや炊飯ジャーの商品開発に従事後、現在は第一事業部で炊飯ジャーや自動圧力IHなべの商品企画を担当している

確かにそうかもしれませんね。象印は10年に高級炊飯ジャー「極め羽釜」を発売して、その翌年に南部鉄器を使用した「南部鉄器 極め羽釜」を発売しました。この時期も内釜に特徴を出しているメーカーはありましたが、内釜ブーム全般を弊社がけん引していたと言えるほど、インパクトのある製品だったと思います。ただ18年に、本体の構造をリニューアルした「炎舞炊き」を投入したタイミングで、内釜に南部鉄器を使用するのをやめました。

南部鉄器を採用していた頃はずっと内釜にこだわった開発をしていたんです。でも釜を変えるだけでは限界も見えていた。何か別の方法を見つけないと、さらなる進化が止まってしまい、これ以上先はないと考えていたのです。そこで内釜ではなくよりおいしく炊くために何が必要かを見直しました。

その結果、生まれたのが、従来1つだけだった加熱用のIHヒーターを3つに増やした「炎舞炊き」です。IHの構造は1988年に他社から発売された「IHジャー炊飯器」からずっと変わっていなかったので、技術的には大きな変化となります。

2018年7月に発売された象印の圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き(NW-KA型)」

――炎舞炊きは、3つのIHヒーターで火力をそれぞれ制御し、部分的に集中加熱をするという方式ですね。1つでまとめて加熱するのではなく、3つのヒーターが交代で内釜を加熱していく。この方式は業界初だと思いますが、なぜこのような構造にしたのですか。

ヒントは昔ながらのかまどです。かまどは炊飯の原点ですからね。おいしいごはんを炊くにはどうすればいいか、実際に奈良県立民俗博物館の古民家にあるかまどでごはんを炊いてみたりしながら研究を重ねました。

上が従来の炊飯ジャーに搭載された加熱用IHヒーター。下が炎舞炊き。3つあるIHヒーターを交代で加熱することで複雑な対流を発生させる。このヒントはかまどにあったという