新型コロナウイルスの感染拡大により患者と家族が会えない全国の緩和ケアの現場で、テレビ電話によるオンライン面会を普及させようと取り組む医師がいる。集団感染が起きた永寿総合病院(東京都台東区)のがん診療支援・緩和ケアセンター長、広橋猛医師(42)。緩和ケアでは、治療より生活の充実を優先させるため、家族など大切な人と過ごす時間が大事だ。「大切な人の顔を見ることで、患者のつらさを和らげたい」。福岡など全国の医師とクラウドファンディング(CF)を立ち上げ、設備投資費用を募っている。

 病院では3月下旬から患者や医師ら200人以上が院内感染した。末期がんの患者たちが過ごす緩和ケア病棟では感染はなかったが、面会が禁止された。

 そんな中、70代の妻が入院する男性から「妻の顔を見たい」と頼まれた。妻は寝たきりで、電話ではほとんど会話ができない。男性は看護師から送られるメールしか、妻の近況を知る手段がなかった。

 広橋氏は夫婦を“再会”させるため、自費で購入したタブレット端末の無料通信アプリのテレビ電話機能を使った。男性は「こんな幸せなことはない」と喜び、妻も笑顔を取り戻した。

 患者の心のケアには家族の存在が欠かせないと再認識した広橋氏。以来、入院患者約20人と家族をオンラインで結んだ。オンライン面会では遠方の親族が顔を見せたり、グループ通話機能で複数の親族同士がだんらんしたりすることも。「いろんな可能性、発展性を感じ、オンライン面会を広げたいと思った」

 広橋氏はオンライン面会を普及させようと、全国の緩和ケア医に呼びかけ、CFサイト「READYFOR」でタブレット端末の購入資金を募ることを決意。募集期限の6月末までに2千万円を目指しており、現在1500万円を超える寄付が集まっている。端末は7月以降、全国の約100施設に配る予定。利用者にはアンケートも行い、課題も探る。

 CFに賛同する浜の町病院(福岡市)の緩和医療内科の永山淳部長(51)は「離れた家族と患者の、最期の別れの準備を助ける選択肢の一つになりえる」と期待を寄せている。(一ノ宮史成)