4度目の候補で、念願の芥川賞を射止めた。古川真人さんは「何でこうなっちゃったんだろう、おれはこれからどうなっちゃうんだろうという気持ち」と正直に吐露する。

 1988年福岡市中央区生まれ。高校時代から小説を書き始めた。国学院大中退後、2016年に「縫わんばならん」で新潮新人賞を受賞してデビュー。同作を含め芥川賞候補作が続き、注目を集めた。

 受賞作の「背高泡立草(せいたかあわだちそう)」は長崎県の離島を訪れた奈美が、母方の実家である吉川家の空き家で草刈りをする。現在の物語に過去のエピソードが重層的に織り込まれ、江戸期の捕鯨や戦中の満州移住など海を往来した人々や出来事を短編連作形式で紡いだ。九州の方言も効果的に使っている。

 両親が海辺の出身で、自身も幼い頃から海に親しんだ。「港には人や物が往来し、それぞれが物語を内包している」との思いが今作に結実した。吉川家はデビュー作から書き続けている設定で、家族という共同体への興味は尽きない。うっそうと繁茂する草の生命力に「時間の層を埋めていく」イメージを重ねた。

 トルストイの「戦争と平和」をはじめ三島由紀夫や泉鏡花、谷崎潤一郎などに影響を受けた。昭和最後の年に生まれたという意識も強い。平成、令和へとつながる時代を「登場人物を通して書いていきたい」と今後の長編への展望を語る。

 横浜市で会社員の兄と2人暮らし。「カレーなど日持ちする料理」が得意で、家事を担いながら執筆している。31歳。 (平原奈央子)