大分県佐伯市の大地酒造=池田敬社長(58)=の新工場が同市上浦に完成し、15日に落成式があった。明治創業の歴史に幕を引く瀬戸際だった老舗酒蔵を、上浦で酒販店を営む池田さんが引き継いで1年3カ月。「酒を売るだけでなく、自ら造りたい」という夢を支える新たな拠点となる。

 新工場はJR浅海井(あざむい)駅近くの約1400平方メートルの敷地に、約400平方メートルの醸造棟を建設。厳密な温度管理ができる仕込み室や麹室(こうじむろ)、作業動線を考慮した屋内クレーンなどを備える。投資額約1億円。昭和30年代のホーロー製の仕込みだるや蒸し器、搾り器など使い込んだ器具は引き続き使う。年間約300石(5万4千リットル)を生産できる。

 池田さんは2010年ごろに、後継者のなかった同酒造の大地正一会長(69)に申し出て酒造りを学び始めた。故郷上浦での酒造りという夢を温めてきたが、18年10月に社長に就いてから準備は加速し昨年8月に着工にこぎ着けた。

 新工場では近く仕込みが始まる。水脈の異なる2本の井戸から軟水と硬水が湧くという珍しい環境。池田さんの弟で杜氏(とうじ)の司さん(56)は「期待より不安の方が大きいが不安をどう楽しむか。今より水は良いし、もろみの様子を見ながらやっていく」と語りつつ「お客さんに迷惑をかけるような物は造れない」と気を引き締める。

 大地酒造は1885(明治18)年創業で現在、「花笑み」と「龍爽香(さちかぜ)」の2銘柄合わせて年間100石を生産している。市中心部船頭町の旧工場は引き続き製品貯蔵場として活用する他、将来は焼酎工場に改装する計画だ。

 落成式で池田社長は「上浦の過疎化は尋常ではないが、(酒造りを通じて)地域の振興に少しでも役立ちたい」と決意を語った。 (堀田正彦)