科捜研のリアル(9)

 Q ドラマ「科捜研の女」では京都府警の科学捜査研究所(科捜研)の法医科の女性研究員が活躍していますが、福岡県警の科捜研でも女性の活躍は進んでいるのですか?

 「私が入った頃は法医科に1人もいませんでしたが、今では多くの女性が頑張っています」。西日本新聞「あなたの特命取材班」通信員の質問に、法医科に勤務して12年目の百田芙美さん(38)が笑顔で答える。徐々に女性職員の数が増え、今では約50人のうち、10人が女性という。それでもなお男性が8割だが、百田さんは「仕事で性別を意識することはない」という。

 「科捜研の女」のワークライフバランスを聞いた。朝は7時半から。事件発生で、時に緊急の仕事が入り残業することもあるが、午後5時45分の定時には仕事を終えるのが基本だ。

 百田さんの担当はDNA型鑑定。県内で起きたある性犯罪事件。現場に残された試料を鑑定した結果、被害に遭った女性のDNA型とともに、別のものも含まれていた。警察庁のデータベースにあった男のものと一致。容疑者が浮上し、余罪が明らかになった。

 最近は産休や育休を取得してから職場に復帰し、仕事と家庭を両立させている職員も多いという。「働きやすい職場になってきていると感じる」そうだ。

 若い力も育っている。2年目の松尾真奈さん(24)は生命科学を専門に勉強してきた経験を生かそうと法医科へ。今は捜査現場の血痕や唾液とみられるものが、本当に人間のものなのかを調べる「物体証明」を担当している。「ドラマの影響で科捜研は華々しく活躍するイメージだったが、実際は捜査を後ろから支える堅実な仕事」と語る。

 経験を積み、鑑定依頼の試料も増えてきた。「自分の鑑定が裁判に影響する。絶対に間違いがあってはいけないというプレッシャーがある」と感じるようになった。優先順位をいかにすべきかなど、まず相談するのは先輩の百田さんという。

 時には2人以外の女性職員も交えて「女子会」を開き、仕事を離れて盛り上がることもある。

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 科捜研の仕事は事件捜査だけに限らない。災害現場で遺体の身元を確認する鑑定もある。時間がたち、遺族が見ても分からないケースがある。爪などからDNA型を鑑定し、親族の可能性がある人のDNA型と比べていく。

 百田さんは2017年の九州豪雨など災害で亡くなった人の鑑定を経験した。「あなたが早く鑑定してくれたから、ご遺体を早くお返しすることができた」。現場の捜査員からこんな感謝の言葉を聞き、身が引き締まった。「科学でなければ、分からないこともある。あらためて、科捜研の存在意義を感じた」と振り返る。

 事件事故、災害…。現場のニーズに応じ、警察のIT化やAI化はこれからも進んでいくだろう。そして、その最先端に立つのが科捜研のメンバーたちだ。堅実に、正確に、真実に向かい、われわれの生活を支えてほしい。(押川知美、黒田加那が担当しました)

 ◆現場に出動する時は作業用の服で

 ―アフター6や休みの日には何をしていますか?

 百田さん「インドア派なので、家でゆっくりするのが多いですね」

 松尾さん「食べ歩きが趣味なので、おいしいお店を探すのが好きです」

 ―科捜研には制服がありますか?

 松尾さん「現場に出動するときは、作業用の服を着ます。所内でも、試料を扱う時には白衣を着用していますね」

 ―百田さんは女性研究員の先駆けですから、後輩のお手本として大変ですね。

 百田さん「照れます〜(笑)。ただ、『仕事の手を抜かない』『早く回答する』ということを鑑定に取り組む姿を通じて、伝えられればと思っています」