人間の1億倍といわれる嗅覚を使い、行方不明者の捜索や犯人追跡に当たる警察犬。佐賀県神埼市の永渕広子さん(32)は雌のジャーマンシェパードの「リアン」とともに県警から警察犬と指導手(ハンドラー)として嘱託を受け、2011年からの出動は100回を超えた。

 県警は現在、審査に合格した犬8匹と指導手6人を嘱託している。「捜せ」などの掛け声でリアンに指示を出し、行方不明者らを捜し当てる。

 平日は団体職員として働き、夜間や休日に要請があると現場に向かう。1月のある夜に出動した際は、気温0・9度の寒空の下で高齢女性を捜索した。枕カバーに残ったにおいを手掛かりにリアンと4キロも足跡をたどり、女性の保護につなげた。

 「行方不明者を自分の家族だと思って、どんな現場でも気を抜かずに」がモットー。仕事との両立は大変だが、「助けを待っている人がいると思うと、無意識に身体が動く」。警察活動に多大な貢献をしたとして、2月には県警本部長から感謝状を贈られた。

 幼稚園児の時、実家で犬を飼い始めたことがきっかけで犬が好きになった。「大好きな犬と一緒に社会に貢献したい」という思いから、災害時の行方不明者を捜索する災害救助犬のハンドラーを目指すようになる。短大卒業後は病院に就職。働きながら熊本県にある救助犬の訓練所に通った。

 ちょうど同時期に、先輩ハンドラーから「優秀な犬が近々出産予定だ」という情報を耳にし、生まれる子犬をもらうことに。フランス語で絆を意味する「リアン」と名付け、仕事後や土日を使って訓練に励み、二人三脚で災害救助犬を目指した。

 訓練所に通い始めてから1年半ほどが過ぎた10年3月。災害現場からの救出を想定した災害救助犬の試験にリアンとともに合格した。その後、警察犬の審査も通過し、活躍の場を広げた。

 リアンは現在11歳で、人間でいうと80歳を超えたおばあちゃん。体力面などから17年に災害救助犬は引退したが、警察犬としての嘱託期間はまだ1年半以上ある。出動要請の電話が鳴ると、リアンはそわそわし始めるという。「現場へ行く気は満々。これからも一緒に頑張りたい」。永渕さんとリアンの出動は続く。(野村有希)