料亭の個室で食べるラーメン

 飲食店の格付け本「ミシュランガイド」で二つ星を獲得したふぐ料理店「油山山荘」(福岡市城南区)が、コロナ禍を機にラーメンを提供し、話題となっている。同店の渡辺健さん(71)はかつて掛け持ちで人気ラーメン店を経営。しかし、ふぐに専念するために閉店した経緯がある。“幻の一杯”を求め、県内外の麺好きが詰めかけている。

 1972年創業の油山山荘は、福岡、佐賀などを対象にしたミシュランガイド2014、19年版で連続して二つ星を獲得。人気の高級料亭として国内外の客の舌をうならせてきた。しかし、新型コロナウイルスの影響で4、5月の多くを休業。時間を持て余した渡辺さんはかつての味の再現に乗り出した。「時間があるなら好きなことをしたい。そこで思いついたのが『丸八』の一杯でした」

 丸八とは、渡辺さんが好物のラーメンの研究を重ね、89年に同市博多区で創業したラーメン店。濃厚な豚骨ラーメンで多くのファンを獲得したが、料亭「油山山荘」とラーメン店「丸八」という二足のわらじは想像以上に大変だった。10年ほどでいったん閉店。あきらめきれずに03年に同市南区に再出店したが、ちょうど料亭で始めていたふぐ料理が大ヒット。手が回らなくなり、3年後に再びのれんを下ろした。丸八のラーメンは幻の味となった。

 「嫌でラーメンをやめたわけではない。体も覚えていた」。緊急事態宣言が解除された後も客足が戻らない中、打開策の一つとして6月から昼限定でラーメン(750円)の提供を始めた。豚骨のみを長時間煮込んだスープは豚骨の甘いだしが香る。麺もかつてと同じものを取り寄せた。

 渡辺さんの腕は確かだ。福岡県筑前町の「丸八 朝倉店」や大分市の「丸優ラーメン」など、丸八時代の弟子たちは人気店を営む。福岡の老舗「名島亭」の創業者、城戸修さん(68)も教えを受けた一人で「日本料理の方なのでとにかく仕事が丁寧」と絶賛。ラーメン職人としての評価の高さゆえか、今回の復活は九州のラーメン界でじわりと話題になっている。

 「塩加減などふぐ料理の経験を通してラーメンがよりおいしくなった。丸八を知らない人にも食べてもらいたい」。完全予約制で個室を用意。高級料亭の庭を眺めながら食べることができる。ラーメンの「新しい様式」かもしれない。

 ふぐの本格提供が始まる前の9月末まで続ける予定。ラーメンの営業時間は正午〜午後3時、同店=092(871)5034。 (小川祥平)