愛媛県松山市のイベントで三つの輪のマークを作るシトラスリボンプロジェクトのメンバー(甲斐朋香さん提供)

 感染防止のため行動変容が必要となっている新型コロナウイルス。でも、もし感染した人がいても過剰に怖がったり差別したりせず、「ただいま」「おかえり」と迎えられる地域でありたい−。そんな思いをかんきつ系の色に込めた「シトラスリボン」の活動が各地に広がっている。福岡県古賀市の花見小では児童が休み時間にリボンを作り、家族や来校者にも配っている。子どもたちの活動に触発され、古賀市役所職員もリボン作りに取り組み始めた。

 「やったー、できた」「もう7個作ったよ」。昼休み、集まってきた児童が先生に教わりながらシトラスリボンを作っていた。高学年の子が低学年児童に作ってみせる姿も。

 黄色や緑色のリボンで輪を三つ作り、ホチキスでとめる。子どもたちはさっそく、自分の名札に飾る。

 リボンに込められた意味を、児童に聞いてみた。「コロナになった人が病院から帰ってきたときに『お帰り』って言えるように」。6年生の納富小春さん(11)が教えてくれた。

 分散登校から通常登校に移行し、日常が戻ってくるように見えた。だが大住奈留美校長は「コロナが怖い」と見えないものにおびえる子どもたちが気がかりだった。校門でのあいさつもマスクで表情が見えにくく、目を伏せたまま通り過ぎる子もいる。「コロナにコミュニケーション能力が負けそうになっている」

 そんなとき、シトラスリボンの記事を見た。「児童がリボンを作ることで、自分は感染者や医療関係者を差別しない、という心が育ってくれれば」と大住校長。教員たちと試作して、子どもたちに「一緒に作ろう」と呼びかけた。

 家族や先生の分のリボンも作る子どもたち。お友達が感染して休んでも、「お帰り」と言える心づくりをしておこう。そんな思いで取り組んでいる。

シトラスリボン発起人「大丈夫」の目印に

 「シトラスリボンプロジェクト」は4月、愛媛県松山市の市民グループが始めた。発起人の一人、松山大准教授の甲斐朋香さん(49)=福岡市東区出身=に、プロジェクトに込める思いを聞いた。

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 感染者や医療従事者だけでなく、なんとなく外に出づらい思いの人たちに『大丈夫ですよ』と知らせる目印を作りたかったのです。

 緊急事態宣言が出たころ、感染者の身元を特定しようとデマ混じりの情報がネット上に流れたりして、「いくら不安だからといって、これは違うのでは」とモヤモヤしました。同じ思いの大学教員や企業経営者、メディア関係者などの有志と「感染しても、地域の中で笑顔の暮らしを取り戻せるように」というメッセージを発信することにしたのです。

 愛媛発の活動なので名物のミカン、かんきつ類(シトラス)の色を使ったリボンを目印にしました。かんきつ系の色であれば材質も作り方も自由。三つの輪は「地域」「家庭」「職場や学校」を表します。活動に賛同した人は、思い思いにシトラスリボンを作って身に付けるだけ。

 リボンだけでなく組みひもや水引、マークをデザインした缶バッジ、シール、食品なども開発され、全国に賛同者が増えています。小鳥を育てていたらいつの間にかプテラノドン(中生代の翼竜の一種)に育っていたような、急速な広がりに驚いています。

 震災を体験した関西や東北からは「人のつながりの大切さを伝えたい」とメッセージも。未知の事態の中でも「ゆるやかにつながっていよう」という思いが感じられます。

 (今井知可子)