◆タカ番記者コラム「好球筆打」

 人の偉大さは亡くなった後に表れる。そんなニュアンスの言葉をよく耳にするが、まさしくその一人だった。虚血性心不全のため、11日に急逝した野村克也さん(享年84)だ。

 訃報から一夜明け、この日のスポーツ紙を読みあさった。各紙10ページ前後にわたる大展開。本紙も芸能面と合わせて8ページと異例の対応を取るなど、野村さんの存在の大きさを再認識した。

 当然、各紙に出てくる球界OBも大物ばかりで、それぞれが当時を懐かしむように故人を悼んでいた。面識のないこちらは一つ一つに余すことなく目を通し、勝手に「野村克也」という人物像を思い描いていた。

 今のホークスに野村さんの指導を受けた現役選手はいない。しかし、当然面識はあり、間接的に関係を持ったことのある選手は多数存在する。そのうちの一人が歴代22位、現役最多の2171安打を誇る内川だ。

 既に有名な話だが、生前、野村さんが認めた右打者の一人が内川だった。「プロ野球始まって以来の好打者」「右打者でこれだけ器用に、広角的に変化球に対応できる打者は、60年プロ(野球)の世界にいるけど、見たことない」。2017年、DeNAとの日本シリーズ第6戦で、9回に起死回生の同点本塁打を放った内川の打撃を解説した野村さんが残した賛辞だ。

 もちろん、絶賛された「野村語録」は内川の耳にも届き、その後の野球人生に影響を与えた言葉として深く刻まれている。

 「あの野村さんにそう言ってもらえたからこそ、もっと技術を詰めなきゃと思えたし、もっと練習しなきゃと思った。また、自分が出す結果に対して責任を持たなきゃとも思えた。直接的ではないけれど、野村さんにもらった言葉は自分の中の宝物です」

 ここ3年は不振と故障に苦しみ、今年は激しいレギュラー争いを強いられる立場となった。今キャンプでも左膝を痛め、現在は別メニュー調整と苦境が続くが、プロ野球史上最年長での首位打者に目標を定めるなど、やる気に満ちあふれる。「野村さんの思いにもっと結果で応えたい」。8月で38歳になる男は、この日の全体アップ前の黙とうで、その思いをさらに強いものとしたに違いない。 (石田泰隆)