●1972年式ALPINE RENAULT A110 1600S

戦後現れたスポーツカーのカリスマのひとり、ジャン・レデレ。 自身が腕を磨いたアルプスのワインディングに敬意を表して アルピーヌと名付けられた彼の作品は ラリーの概念そのものを変えるきっかけを作った。




 自身がその腕を磨き、クルマ造りのアイデアを蓄えたアルプスに敬意を表し”アルピーヌ”と命名しただけあって、A110はラリーを中心としたコンペティションシーンで揉まれ、たくましく成長していく。

 特にゴルディーニの手による1300ccユニットを手に入れてからは、総合優勝を狙うコンペティターとして躍進。ルノーの実質的なワークス部門として活動することになった68年以降は、潤沢な資金のもと各地のレースで活躍した。

 WRC初年度となった73年シーズンではモンテカルロ1‐2‐3フィニッシュなど6勝を挙げる圧倒的な強さをみせシリーズを席巻、見事初代チャンピオンに輝いたのである。

 一方でこのアルピーヌの成功は、それまで市販乗用車をベースに行われていたラリーのスタイルを変え、より先鋭化させてしまうという副作用をもたらした。その最たる例が、74年のツール・ド・コルスでデビューし、”ラリーを殺した”と揶揄されるほど、圧倒的な強さを見せつけたランチア・ストラトスだ。

 そしてこの頃を境にアルピーヌの主軸は後継たるA310へと移り、静かな世代交代が行われていく。

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 丸みを帯びたスタイル、メッキモールが張り巡らされたボディ、大径メーター、4気筒OHVユニットなど、いま改めてA110を見ると、そのディテールには、50年代の香りが多く残されていることに気づく。
 おそらく、このような美しさと強さを兼ね合わせたベルリネットが、今後ラリーシーンに現れる事は、おそらくないだろう。


 そういう意味においてもA110は、フランス自動車界に高貴さと栄光をもたらすことに成功した、唯一無二の存在といえるのではないだろうか。



染みひとつないエンジンルームに収まるルノー16TS譲りのオールアルミ製4気筒OHV 807-25型エンジン。2基のウェーバー45DCOE38を組み合わせた1565ccユニットは、わずか680kg のボディに対し138psを発揮する。現在は1600S GSのピストンに換え1690ccにボアアップされているという。



今回取材した車両は、撮影を担当した赤松孝カメラマンが所有し続けている72年型の1600S。オリジナルを尊重しつつ、機能部品は適宜アップデートするなど、彼のこだわりと情熱が詰まった1台となっている。


1972年式ALPINE RENAULT A110 1600S
全長 3850mm
全幅 1520mm
全高 1130mm
ホイールベース 2100mm
トレッド前/後 1311/1290mm
車両重量 680kg
乗員定員 2名
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量 1565cc
ボア×ストローク 77.0×84.0mm
圧縮比 10.25:1
最高出力 138ps/6000rpm
最大トルク 14.7kg-m/5000rpm
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション 前ダブルウィッシュボーンコイル
        後スウィングアクスルセミトレーリングアームコイル
ブレーキ 前後ともディスク
タイヤ 前後とも165HR13

掲載:ノスタルジックヒーロー 2011年12月号 Vol.148(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)