「規格外」の男は我慢の時を迎えている。

 ドラゴンズのルーキー、石川昂弥はその爪を研ぎ澄まし、プロの打席に立つ時を待っている。

 昨年春の選抜高校野球で甲子園を大いに沸かせる存在となったことは記憶に新しい。母校、東邦高校に30年ぶりとなる優勝をもたらしたこの大会で、全試合に先発、打っては3本塁打を記録している。投打にわたりチームをけん引、強烈なインパクトは野球ファンの脳裏に今なお、焼き付いている。

 また、夏に行われたU-18W杯でも全試合で日本代表の4番に座り、打率.333と「世代の主軸」としての役割を存分に果たした。特に、パナマ戦で放ったレフトへの豪快な一発は打球の鋭さはもちろん、拮抗した試合展開の中でチームに勢いをもたらす絶妙な場面で披露したもので、膝元の速球をとらえ、すくい上げてスタンドへ放り込む技術、重要なシーンで「決め切る」勝負強さをいかんなく発揮した、鮮やかな本塁打だった。

 ドラフトを経て、地元でもあり相思相愛だった中日ドラゴンズのユニフォームをまとうなど、順風満帆ともいえる、華やかな道のりは続いた。

 ただ、キャンプを2軍で迎え、期待に包まれながらプロとしてのスタートを切ったものの、試合出場の機会はまだ訪れていない。多くのプロ野球選手、アスリートと同じく、そのパフォーマンスを発揮することができずにいる。未曽有の事態の中、練習すらままならず、大型ルーキーといえども、グラウンドでのプレーが思うようにいかない現状にもどかしさと焦りを感じているのが容易に想像できてしまう。「思うようにできないところはある」といった本人のコメントもメディアを通して伝えられている。

 それでも、人々に通常の生活が戻り、グラウンドにも日常が帰ってきたとき、この男の目の覚めるようなアーチが観客を大いに沸かせてくれることは間違いない。新しい世代の、若きスター候補として、多くのファンが認めていることは確かであり、ドラゴンズ待望の和製大砲となれる素質を秘めている。中心打者として「恐竜打線」をもう一度、蘇らせるとともに、多くのプロ野球ファンにまばゆい希望を届けてくれるはずだ。