6月25日に行われたソフトバンク対西武の一戦。試合は「4-2」でソフトバンクが勝利したが、試合結果以上に注目を集めたのがソフトバンク・バンデンハークの投球だった。

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 同戦に先発したバンデンハークは、昨シーズン12球団トップのチーム打率(.265)、得点数(756点)を記録した強打の西武打線相手を7回裏までノーヒットノーランに抑える快投。しかし、8回裏に西武・山川穂高に内野安打を打たれ、あと一歩のところで大記録を逃す形となった。

 回を追うごとに注目度が高まっていたこともあり、山川に打たれた直後はネット上にも様々な反応が寄せられた。中でも多く目についたのが、「目の前で見てた西口コーチはどんな心境なんだろう」、「西口さんには全然惜しくないって思われてそう(笑)」、「西武ナインも『西口さんの前で達成させるわけにはいかない』って思ってたりして」といった、西武・西口文也一軍投手コーチを引き合いに出したコメントだった。

  現在47歳の西口コーチは現役時代に西武(1995-2015)一筋で活躍し、2017年からは西武で一軍・二軍投手コーチを歴任している人物。現役時代は「436登板・182勝118敗・防御率3.73」といった数字を残した好投手だったが、実はノーヒットノーランを2度、完全試合を1度、記録達成目前で逃した悲運の投手でもある。

 1度目のノーヒットノーラン“未遂”は、2002年8月26日・対ロッテ戦でのこと。序盤の3回までに6点の援護をもらった西口は、9回2アウトまでロッテ打線を四球1つのみに抑える快投。ここで迎えたロッテ・小坂誠をアウトに取れば、ノーヒットノーラン達成というところまでこぎ着けた。

 しかし、ここで小坂にセンター前に落ちるポテンヒットを打たれたことで、西口の快挙は目前でパーに。その後なんとか完封勝利は確保した西口は、試合後に「僕にはまだ早いっていうことなんでしょうかね」と語っている。

 次に悲運に見舞われたのは、2005年5月13日・対巨人戦。西口は6点の援護を背に、巨人・清原和博に1つ死球を与えた以外は巨人打線を完璧に抑えたまま9回2アウトへ。打者の清水隆行を打ち取れば、3年前の悔しさを晴らせる場面だった。

 しかし、西口は清水にスライダーを完璧に捉えられ、痛恨のソロホームランを被弾。ノーヒットノーランどころか完封勝利も消える一発はさすがにショックが大きかったのか、打たれた直後は半笑いのような表情で数秒ほど固まっていた。

 ここまでの2戦も相当な不運だったが、西口最大の悲劇となったのが2005年8月27日・対楽天戦。約3カ月前にノーヒットノーランを逃していた西口は、この日9回3アウトまで楽天打線に1人も出塁を許さない快投を披露。ところが、味方打線が1点も取れていなかったため、西口が完全試合を維持したまま試合は延長戦に突入してしまった。

 当然、西口は大記録達成を目指し延長10回表のマウンドにも上がるが、先頭打者の楽天・沖原佳典が無情にも打球をライト前へ放ち完全試合は消滅。チームは10回裏に石井義人のタイムリーでサヨナラ勝利を収めたが時すでに遅かった。本来なら大記録を達成していたはずの西口の投球は、延長戦で完全試合を逃したのは史上初というありがたくないおまけつきの悲劇だった。

 プロ野球では投手が中盤以降の6〜8回までノーヒットノーラン、完全試合を続ける試合が年に数試合は見られるが、9回2アウトまで3度こぎ着けいずれも記録を逃したのは西口ぐらいのもの。引退からは約5年が経過しているが、“悲運の投手”という印象は今もなお多くのファンの心に刻まれているようだ。

文 / 柴田雅人