ノンフィクションも多く残している作家・海老沢泰久氏のスポーツ小説の中に、ベテラン選手を扱った作品がある。故障で戦線を離脱したベテランがチームに復帰した時、全く別のチームになっていたという感想を持った。故障前と変わらない、同じメンバーと試合をしているのに、だ。疎外感を持ち、それで引退を決めたと――。

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 巨人・小林誠司捕手の一軍復帰は、チームの優勝に間に合うのだろうか。

 原巨人にマジックナンバーが点灯した9月15日、小林はファーム戦でスタメンマスクを務め、同じく一軍昇格をめざす藤岡貴裕投手と奮闘していた。

 「試合前の練習を見ても、骨折した左尺骨の影響は全くないようです。一軍に呼ばれても大丈夫だと思いますが」(取材記者)

 しかし、同時点では小林の昇格話は聞かれなかった。打撃好調の大城卓三はエース・菅野智之と連勝街道を突き進み、炭谷銀仁朗も結果を残している。第3捕手の岸田行倫も「円陣番長」と呼ばれるなど、先輩野手たちに可愛がられていた。

 コーチ経験のあるプロ野球解説者が一軍選手と二軍選手を入れ換えるタイミングについて、こう説明していた。

 「二軍の誰が絶好調だという情報は、2番なんです。1番に来るのは『一軍にいる誰を落とすか』なんです。ある一軍選手の調子が良くない、その選手を二軍で再調整させると決まったら、誰を昇格させるかという話になるんです。小林が実戦復帰し、奮闘しているとの情報はすでに原辰徳監督にも届いているはずです」

 通常、一軍登録する捕手は3人。大城、炭谷、岸田が頑張っているとなれば、昇格候補として小林は考えにくい。こうした状況が「小林トレード論」につながっているのだろう。

 「今季、小林は国内FA権を取得する予定でした。昨年オフ、小林の流出を阻止するため、複数年契約を交わした(3年)との一報も出ましたが、それを否定する声もあるんです」(球界関係者)

 小林が早期の一軍昇格を果たすとすれば、それはチームが連敗した時だろう。スタメン捕手を代えることで、チームをリフレッシュすることができるからだ。原巨人が負けることはあるだろうが、大型連敗はちょっと考えにくい。

 「いや、近く、小林の一軍昇格がありそう。15日のスタメン出場は阿部慎之助二軍監督の愛情とも解釈できます。先発の藤岡は今後も続く一軍の連戦に備え、近く昇格するとの情報も出ています」(前出・プロ野球解説者)

 どういう意味かと言うと、プロ野球の世界では「投手と捕手の相性」を重要視する。藤岡が二軍で調整している時に「マスクをかぶっていたのが小林」となれば、その藤岡が一軍でも本領を発揮できるよう、「二軍での状態を知っている小林と一緒に」となるからだ。

 小林は菅野、山口俊とパートナーを代えて最優秀バッテリー賞に選ばれている。投手の長所を引き出すセンスは高い。

 藤岡とのバッテリーは、一軍復帰したときに疎外感を持たせないための阿部二軍監督の配慮だったようだ。

 元パートナー・菅野は11連勝でマジックナンバーを点灯させたが、その9月15日は6回3失点と決して調子は良くなかった。菅野での敗戦はチームに悪影響を及ぼす。それを阻止するにはパートナー・チェンジも一案だろう。同日、二軍戦でマスクをかぶった小林が「優勝の最後のピース」になりそうだ。(スポーツライター・飯山満)