ダルビッシュと新天地ドジャース。どうしても必要だった「最終兵器」。

ダルビッシュと新天地ドジャース。どうしても必要だった「最終兵器」。

 サマートレードのデッドラインぎりぎりで、ダルビッシュ有の移籍が決まった。インターネットに第一報の流れたのが、7月31日午後4時10分(米国東部時間)過ぎだから、文字どおりブザービーターだ。4時直前に、レンジャーズとドジャースとの間で交渉が成立したのだった。

 少し前の3時45分、ドジャースはトニー・ワトソン(パイレーツ)とトニー・シングラーニ(レッズ)の獲得を発表した。どちらも左腕のリリーバーだ。ブルペンの左投手が手薄だったから、これは予想どおりの補強だ。

 さらにその少し前(3時5分)には、ヤンキースがソニー・グレイ(アスレティックス)の獲得を発表していた。グレイは、ダルビッシュと並んで今年の移籍市場の目玉だった。この瞬間、ダルビッシュのヤンキース移籍という線は消えた。あとは、ドジャースへの移籍が成立するかどうかだ。

「ダルビッシュをレンタルする」意識が働いた?

 2017年シーズン終了後、ダルビッシュはFA権を獲得する。つまり、いま他球団へ移ったとしても、来季以降の契約がどうなるかはわからない。7月31日の時点で2位に14ゲーム差をつけ、地区優勝をほぼ手中に収めているドジャースにしてみれば、ポストシーズンのためだけに「ダルビッシュをレンタルする」という意識が働いてもおかしくはない。そのためには、どれだけの交換要員を用意できるか。交渉が長引いたのは、微妙な状況のせいだろう。

 結論からいうと、ドジャースは3人の有望若手選手をレンジャーズに譲渡した。二塁手兼外野手のウィリー・カルフーン、右腕投手のA.J.アレクシー、内野手のブレンドン・デイヴィス。

 チームのプロスペクト順位(期待度のランク)でいうと、カルフーンが4位で、他は15位以下の選手である。1位のアレックス・ヴァーデュゴ(外野手)、2位のウォーカー・ビューラー(投手)、3位のヤディエル・アルバレス(投手)は残留した。彼らをプロテクトできたのは、賢明な商談の成果だ。

マエケンらは投球回数が100イニングスに達してない。

 過去数年を振り返っても、ドジャースの有望選手は、多くがスター街道を歩んでいる。ジョク・ピーダーソン、コーリー・シーガー、コーディ・ベリンジャーらがそうだ。ドジャースのGMファルハン・ザイディは、心中ひそかに快哉を叫んだのではないか。この交換ならば、もしダルビッシュが来季以降、他球団を選んだとしても、けっして損ではない。

 逆にいうと、ドジャースは久しぶりのワールドシリーズ制覇のために、どうしてもダルビッシュを必要とした。

 ドジャースのチーム防御率は、8月1日現在、3.08で30球団中ベストだ。ただ、絶対エースのクレイトン・カーショーを除くと、長いイニングスを任せられる投手がいない。12勝1敗のアレックス・ウッド、防御率3.35のリッチ・ヒル、10勝4敗の前田健太。だれを見ても、今季の投球回数は100イニングスに達していない。デイヴ・ロバーツ監督の方針もあって、彼らは5回か6回で降板させられるケースが非常に多い。

 となると当然、ブルペンが忙しくなる。幸い、抑えの切り札ケンリー・ジャンセンを筆頭に、ペドロ・バエスやジョシュ・フィールズが好調なため、ここまでは大過なく来ているが、短期決戦のポストシーズンではどうしても戦い方が変わってくる。

最大の懸念はカーショーの「ポストシーズンの弱さ」。

 最大の懸念は、不規則な間隔で投げたときのカーショーに不安が残ることだ。近ごろは好投するようになったが、一時期のカーショーには「ポストシーズンに弱い」という評判が付きまとった。2013年のNLCS、'14年のNLDSではともにカーディナルスに乱打されたし、'16年のNLDSでナショナルズに打ち込まれたゲームも記憶に新しい。「ストレスがかかったときのカーショー」は、ときおり大きく乱れてしまうのだ。

 だが、ダルビッシュが加入すれば話はちがってくる。2番手の彼が長いイニングスを投げ、ウッドやヒル(もしくは前田)が3戦以降でまずまずの投球を見せれば、カーショーへの負担はずっと軽くなるし、ブルペン総動員の非常事態を避けることも可能になる。

ワールドシリーズ制覇請負人の役割を果たせれば……。

 と書けばわかるように、ドジャースにしてみれば、ダルビッシュは喉から手が出るほど欲しかった最終兵器なのだ。問題は、彼自身の調子がここへきてやや下降気味なことだが、投球時の癖(フォーシームを投げるときに、手が一瞬止まる)を修正しさえすれば、復調は早いのではないか。

 それ以外では、奪三振率(9回あたり9.7個)が昨年(9回あたり11.8個)に比べて下がり、被本塁打率(9回あたり1.3本)が昨年(9回あたり1.1本)に比べてやや高いことを指摘する声がある。だがこのあたりは、環境が変われば克服可能な課題だと思う。ドジャー・スタジアムは投手に有利な球場だし、DHのいない対戦相手が増えることは、やはり大きなプラス材料だ。なによりも、ナ・リーグの打者がダルビッシュのスライダーに眼を馴らすまでには、かなり時間がかかる。ポストシーズンを含めてあと3カ月、ダルビッシュがワールドシリーズ制覇請負人の役割を果たせば、ドジャースとの新規複数年契約という選択も、改めて視野に入ってくるだろう。

文=芝山幹郎

photograph by AFLO

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