ポドルスキ、ドゥンガ、エムボマ……。福西崇史が語る大物外国人の活用法。

ポドルスキ、ドゥンガ、エムボマ……。福西崇史が語る大物外国人の活用法。

 強烈な左足ミドルと、2人のマーカーに競り勝ってのヘディングシュートでいきなりの2ゴール。Jリーグデビュー戦の大宮戦では、さすがポドルスキという個の力を見せつけました。とはいえノーゴールに終わった柏戦を含めて、今の段階は神戸というチームの中でどう活きていくかを本人も周囲も作り上げているところでしょうね。

 僕はドイツW杯の直前に、ポドルスキのいたドイツと対戦した経験があります(結果は2−2)。当時の彼は有望な若手の1人という立ち位置。僕自身もマッチアップした相手はシュバインシュタイガーやバラックでした。でも試合中には「ポドルスキ、いやらしいプレーをしてくるな」と感じることは多かったですよ。例えば、トップの位置から引いてきてボールを受けるタイミングが上手いし、中盤と最終ラインの間に入ってマークにつきづらいポジショニングを取る。そして何より、強烈な左足を持っていましたしね。

 今は解説者としてポドルスキを見ていますが、彼自身のプレースタイルは変わってないなと感じます。年齢を重ねたこともあって運動量が落ちたのは否めませんけど、もともとそこまで運動量で勝負するタイプじゃないですし、ボールを持った時に“何かしてくるぞ”という雰囲気は今もありますよね。

打てそう、抜けそうな場面で本領を発揮していない。

 ただどちらの試合も、シュートを打てそうな状況で打たなかった場面があった。個人的に彼はどんどんシュートを打った方がリズムが出てくるタイプだと見ていますが、まだ本人の中で感覚が万全ではないんだと思います。

 ドリブル突破についても同じで、前にいる選手を抜けそうなタイミングだったけど、交わしきれないシーンが見受けられました。その辺りは日本の夏特有の蒸し暑さもあって、まだまだコンディションは上がってないし、彼の良さ、相手守備陣にしてみれば怖さはまだ100%出ていないのかな、と。

ポドルスキに預けすぎて、狙いどころになっている。

 彼自身の調子とともに、周りのチームメートも“ポドルスキはどういうタイプの選手なんだろう”というのを考えながらプレーしている印象ですね。

 この2試合、神戸の選手は「まずポドルスキに預けよう」という意識が強くなりすぎていて、結果的に相手守備陣の“狙いどころ”に設定されている印象があります。1人だけじゃなくて2人で挟み込むなど、ポドルスキがプレッシャーを受けてボールをさばかないといけない状況が生まれている。対戦相手は今後も徹底してくるでしょう。

 それに対してポドルスキはマークが集中していると判断して、ワンタッチではたいたり、冷静にサイドチェンジするなど、高い“サッカー頭脳”を感じさせます。実際、柏戦でマッチアップした中谷(進之介)が「思った以上にシンプルにプレーしてきた」と話していたそうですしね。

遠慮を取り払えば、大森や渡邉といった選手も活きる。

 相手の意識がポドルスキに集中すれば、どこかにスペースが空く。そこをうまく使えるようになればもっと効果的な攻撃が出るはず。今の神戸には、運動量が豊富な日本人選手が多い。大森(晃太郎)や渡邉(千真)といった選手が反応してスペースに飛び出せれば、チャンスは多く作れます。

 ポドルスキを“おとり”に使うのはもちろん、周りがうまく連動すれば、お互いにもっと良さが出てくるはず。そういった意味では信頼関係がもっとできたら……その辺り、まだ遠慮しているのかもしれませんね。

 その遠慮を取り払うキーマンになるのは、ブラジル人のニウトンでしょうか。神戸の中盤はニウトンがコントロールしていて、昨年から神戸でプレーしているので日本人選手の感覚も把握している。橋渡し役としてどんな行動をするのか注目すると面白いと思いますよ。

ドゥンガか……最初の頃は怒られましたよ(笑)。

 ビッグネームの外国籍選手がJリーグにいることのメリット。それは僕自身、チームメートとしても、対戦相手としても経験しました。チームメートはドゥンガで、対戦相手ではエムボマですね。

 さっきはポドルスキにも遠慮し合わないでどう関係性を築くか、という話をしましたけど、ドゥンガに関しては……言い合える関係ではなかったですよ、最初は(笑)。

 ドゥンガが加入した当初は、できないプレーが多いから怒られたし、指摘され続けた。ただ相手の要求に応えられるようになってくると、その関係は少しずつ変わっていく。ドゥンガから怒られる回数が減ったのはもちろん(笑)、できることが増えていくと、ドゥンガがまた違う要求をしてくるんです。

 自然と僕の方からも意見できるようになってくるし、それを繰り返すことで自分自身もチーム全体のレベルも上がったことは間違いない。現時点の神戸はお互いの意見に差がある段階だと思います。そのギャップを練習の中でどれだけ改善していけるかが大事ですね。

「無理、異次元だわ」と思ったエムボマのフィジカル。

 そして対戦相手にとっても、Jリーグの舞台でワールドクラスの選手と戦えることは大きい。僕が印象に残っているのはエムボマのフィジカルです。日本代表を含めて色々な選手とマッチアップしたけど、「無理、異次元だわ」と思ったのは彼だけです(笑)。テクニシャンだったら“抜かれなきゃいい”という感じで対応出来るけど、エムボマはお尻、腕など全身の筋力が強すぎてボールを奪う間合いにすら入らせてくれない。

 何よりエムボマに驚いたのは、動きながらのプレーでした。動かない状態でフィジカルの強さを発揮する選手は多くいましたけど、ドリブルなどでは意外と隙ができて怖さはないんです。でもエムボマの場合は「どこから伸びてきたの?」という足の出方をするし、相当激しく当たったはずなのに、それに耐えてドリブルやシュートに持ち込まれる。そんなエムボマのような相手と戦うことで、日本のディフェンスは強くなるきっかけを手に入れられたと思います。

秋田さんvs.中山さんの対決にも相乗効果が。

 それは、鹿島時代の秋田(豊)さんのプレーを思い出してもらえれば分かりやすいと思います。秋田さんはエムボマと直接マッチアップしたことで鍛えられたのは間違いないし、僕個人としても秋田さんの守備からは「絶対に止めてやる」という闘争心を感じていました。

 そういった経験をしたからこそ、鹿島と僕らジュビロと対戦する時、秋田さんと中山(雅史)さんとのやり合いも激しさを増して、見ごたえがあったんだと思います。

 もちろんエムボマとポドルスキはタイプが違います。ただ柏の中谷、中山(雄太)といった若いセンターバックにとって、冷静に相手の出方をうかがいつつ、闘争心むき出しで向かってくるポドルスキとの対戦は得るものが多かったはず。

 その経験を積み重ねることが、Jリーグ全体のレベルアップにつながるのは間違いないです。

(構成:茂野聡士)

文=福西崇史

photograph by J.LEAGUE PHOTOS

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